知恵の経営

第68回

高機能木炭で倒産危機脱出

アタックスグループ 2016年5月6日
 
島根県出雲市に「出雲土建」という中小企業がある。主な事業は建設工事や土木事業、さらに緑化事業やリサイクル事業も手掛けている。設立は1980年。もともと土木建設会社としてのスタートだったが、その後、事業の多角化と規模の拡大を志向した。

 公共事業の激減や多角化の失敗などもあり、一時倒産の危機に瀕(ひん)している。その折、再建を託されて社長に抜擢(ばってき)されたのが営業の責任者だった、石飛裕司社長である。

 石飛社長は「何としても社員とその家族の生活を守らねば」と営業努力を続けるとともに産学官連携を活用した新商品開発に注力した。そして開発されたのが、主力となった「炭八」というブランド商品だった。

 この商品は、住宅の大きな問題である湿度調整とにおい消しを同時解決する「高機能木炭」である。周知のように以前は、日本の建材として使われている床材や壁紙・合板・断熱材・接着剤などの中に、有害な「ホルムアルデヒド」が含まれていた。一方で、畳には有機リン系農薬が大量に使用され、さらにはカーテンやカーペットにも、防虫剤や防カビ剤・抗菌剤が多く含まれている。これらの物質がアトピーやぜんそくを発生させる要因の一つとされている。
 石飛社長は新商品のテーマを模索している最中に、この問題をアトピーやぜんそくで困っている多くの人たちから聞き、建設会社としてこの問題を解決することに取り組んだのである。

 地元、島根大学の医学部や総合理工学部などと「新しい炭」の共同研究に取り組み、苦節10年、ついに炭八を開発した。

 島根大医学部の先生たちと共同で炭八の効果を確かめた。小児気管支ぜんそくにかかり、薬を飲んでも改善がみられない子供たちを、床下や天井、壁の中に炭八を敷設した家屋に住まわせたところ、何と7人中6人の症状が大きく改善したという。

 こうした成果が認められ、今や出雲市では、戸建て住宅の1割以上に炭八が敷設されているという。

 出雲土建には、アトピーやぜんそくで苦しんだ多くの人々から、症状が出なくなったとか、改善したといった“サンキューレター”が殺到している。

 公共工事がピーク時と比較して半減する中、これからの建設工事会社の生き残り方を示唆している中小企業である。
<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司
2016年5月4日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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