知恵の経営

第3回

非常識が「池のクジラ」生む

アタックスグループ 2015年1月21日
 

 中小企業は「独自の『池』(市場)を見つけ出し、自らがその『池のクジラ』となることで高収益を生み出せる」という考え方について具体的な事例を紹介している。今回は昨年12月24日付で女性活用について取り上げた、地域密着型ファミリーレストラン経営の坂東太郎(茨城県古河市)を“池のクジラ”の視点から分析したい。

 同社は1975年に青谷洋治社長が創業し、非正規を含め社員は約2000人、売上高76億3000万円(2013年時点)の規模に成長している。

 青谷社長がダントツの競争力を築き上げた理由はいくつかあるが、あえて「北関東エリアに出店地域を限定したこと」を一番に挙げたい。北関東エリアで圧倒的なシェアを確保するため全国展開とは全く違う、地域に根差した施策を展開した。

 具体的には、多数の業態・ブランドをつくり、もともと人口密度の少ない限られた商圏の中で、顧客の「その日の気分」や「家族のさまざまなニーズや好み」に合わせ、グループ内でお店を使い分けてもらおうと、そば、海鮮料理、すし、焼き肉、とんかつ-という多数の業態やブランドを用意した。

 また、メニュー数を同業他社よりはるかに多くして、飽きさせない工夫をした。肉体を使う仕事が多い地元農家の人たちが腹いっぱい食べられるように料理のボリュームも増やした。さらに店舗周辺の顧客一人一人の顔と名前を覚える、高いサービスレベルを実現させる「女将さん・花子さん制度」という施策を打った。すべて地域を限定することによって生まれた、業界では“非常識”とされてきた方法だ。

 多くの一般外食チェーン店では低価格志向が進み、安い仕入れ先が見つかれば次々と替えていくのが常識である。しかし、青谷社長は「取引業者を替えない」という非常識を選び、地産地消にこだわり、安心・安全のより良いこだわりの原材料を使うことに心血を注いできた。多くの地元取引業者が坂東太郎のために「いいものを作ろう」と協力し、顧客の支持を得るに至った。

 2010年には、これまでのレストラン業界の効率性追求という常識を覆し、一般のファミレスに比べて店舗面積を広くし、“家族の絆を深める”ためにあえて全席個室という非効率を旨とする「家族レストラン」を開店した。3世代で訪れる家族にすれば、さまざまな料理を注文して分けあいながら、家族だんらんの場を得ることができるようになり、好評を博するに至った。

 同社の施策は「業界の非常識」であるが故に差別化されており、青谷社長の人生は非常識に対する挑戦の連続だった。そして、非常識だったからこそ「池のクジラ」になれたのだ。

 

<執筆>

アタックスグループ 主席コンサルタント 西浦道明

 

2015年1月21日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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