知恵の経営

第45回

馬路村の挑戦 ゆずビジネス

アタックスグループ 2015年11月18日
 

 高知県南国市の高知龍馬空港から、車でくねくねした山間の道路を1時間半ほど走った中山間地に、馬路村という人口941人の小さな村がある。村の面積の96%は森林、2%は河川、田畑や宅地の可住地面積はわずか2%弱である。

 1955年代の高度経済成長期には村人は3000人いたが、基幹産業の林業の衰退と工業化社会、その後のソフト・サービス化社会への移行に伴い、年々人口は加速度的に減少し、今やなんと941人である。より深刻なのは、その高齢化率で、村人の40%は65歳以上の高齢者となった。

 このままでは故郷が消滅すると危機意識を抱いた村の関係者が、今からおよそ45年前に立ち上がった。その中心は馬路村農協の職員たちだった。

 まずは雇用の場をつくらねばと、荒れ果てた森林の間にゆずの木を植え、これを村の第2の柱として育てていった。しかしながら、ゆずの果実の販売だけでは付加価値と雇用の場が十分創出できないと考え、今度はゆずの果汁の販売に乗り出していった。

 しかし当時は、販売力もブランド力もなく、大手ブランドメーカーの下請け工場として、ひたすら薄利多売の生産をするだけだった。しかもこうした単なる下請け的取引は、季節の変動や、好不況により発注者に買いたたかれることが多く、関係者は次第に「いつの日か値決めができる自家商品をつくらねば」という思いを強めていった。

 こうした努力を知って、支援に乗り出してくれたデザイナーや大学関係者らの協力もあり、87年に初めて自家商品を開発・販売した。この商品こそ「ごっくん馬路村」(ゆずのジュース)である。たちまち全国で大反響となった。

 その理由は、商品のネーミングもさることながら、“小さな過疎の村の挑戦”ということで、多くのマスメディアが頻繁に取り上げてくれたからだ。

 発売以来、既に30年近くが経過しているが、いまだに馬路村JAの代表的商品として、年間200万本がコンスタントに販売されている。

 ゆずを利活用した関連商品の開発にチャレンジしていき、現在の商品アイテムは60を超えている。近年では、化粧品や医薬品にまで用途を広げ、化粧品の売上高だけでも1億円を超す規模に成長している。

 こうした関係者の努力が実り、馬路村のゆずビジネスは、スタート当時、わずか3000万円だった売上高は30億円に迫ろうとしている。また、スタート時にゆずの生産に協力した農家はわずか数軒だったが、118軒に増加し、馬路村JAは地域最大の企業となり、村の雇用を下支えしている。

 まさに全国のJAのモデルといえるケースである。

<執筆>

法政大学大学院政策創造研究科教授アタックスグループ顧問・坂本光司

2015年11月18日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

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