知恵の経営

第85回

現場に行くことが解決の道

アタックスグループ 2016年9月14日
 

 今回は、高齢者や障害者向けのケアシューズ・リハビリシューズなどを製造販売する徳武産業(香川県さぬき市)を取り上げる。この連載の中でも、各筆者から何度か紹介されているが、同社を訪問し、昨年、会長になった十河孝男氏から話を聞き、改めて気づかされたことがあった。

 同社は、今でこそ、足に何らかの不自由を抱える高齢者・障害者向けのケアシューズメーカーとして知られているが、もともとは手袋やトラベルスリッパを製造する会社だった。そんな同社が、ケアシューズ製造に取り組むきっかけとなったのは、現場を目の当たりにしたためだったという。

 あるとき、特別養護老人ホームを営む十河会長の友人から、「施設に入居する老人が施設内でよく転んでいる。施設の床を変えたり、手すりなどを付けたが改善しない」「これは施設の問題ではなく、靴の問題ではないかと思うので見に来てくれないか」という話があった。

 さらにその友人は、これまでにいろいろな会社に同じように声を掛けたという。その中には靴メーカーもあったそうだが、この問題を解決できなかったと話した。

 十河会長が話を聞く中で分かったのは、同社以外のメーカーは現場に行くことなく、「床が滑りやすいのではないか」「廊下に手すりをつければ転ばなくなる」といった机上の理論で転ぶ原因を考えていたのだ。現場の状況を見ていない人間が考えた意見を実行したところで、当然、改善されるはずはなかった。
 ただ、十河会長も、本格的な靴作りをするのは初めてということもあり、まずは2年間にわたり500人を超える高齢者・障害者へのニーズ調査を徹底して行った。そこで分かったことは、高齢者・障害者の足はリウマチやむくみ、外反母趾(ぼし)などのさまざまな症状によって、足のサイズが左右異なっていたり、むくみによって左右で厚さが異なっていたりと、一人一人の足に合った靴が必要ということだった。

 十河会長が、他のメーカーができなかった、この問題を解決することができたのは、現場に行って、自分たちの目で現状を知ったことにある。常に現場は動いていて、机上の理論で解決できる問題などないのである。

 自社が抱える問題、自社の顧客が抱える問題を本当に解決したいと思うならば、何を差し置いても、まず現場に行くことだ。それは現場こそが、物事のすべての出発点となっているからである。
<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2016年9月14日フジサンケイビジネスアイ掲載



 
 

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