知恵の経営

第4回

頑張る自動車教習所

アタックスグループ 2015年1月28日
 

 全国には約1400カ所もの自動車教習所がある。かつては入学者が年間250万人を超えたときもあったが、今やその数は150万人前後に減少している。その結果、近年では毎年全国各地で数校が廃校しているばかりか、弱肉強食的な合併も加速している。

 もとよりその最大の要因は18歳人口が激減したことと、若者の車離れが拡大したことである。こうした構造的不況業種といわれる業界だが、顧客の高い支持を集め、成長と発展を続ける教習所が全国各地には少なからず存在する。

 その一つが今回紹介する武蔵境自動車教習所(東京都武蔵野市)だ。場所はJR東京駅から電車で約40分、JR中央線武蔵境駅で下車、そこから徒歩で5分ほど行ったところにある。

 社員数は非正規を含め115人、教習所も武蔵野市の1カ所だけで、業界では中堅クラスだ。しかしながら顧客の支持率は極めて高く、全国での入所者ランキングは過去10年以上、常にベスト3に入っている。より驚かされるのは、年間入所者数の約半分は、ここの卒業生からの紹介客という。

 もともと同社は、現在のような全国区の魅力的な自動車教習所であったかというと、正直正反対だった。そればかりか、先代の社長が就任して数年間は、労働争議に明け暮れ、いつ労務倒産をしてもおかしくないほど、ひどい会社だった。

 こうした中、先代社長は誰よりも一生懸命仕事に取り組んできた上に、ガラス張りの経営をはじめ、社員の側に立っての経営を実践し続け、ついに労働争議に明け暮れていた社員たちから信頼を勝ち取った。

 こうした経営姿勢は4代目となった高橋明希社長にも見事に引き継がれているが、そのレベルは一層進化、発展している。

 同社が評価を受けている経営上の特長は多々あるが、なんといっても「三方良し」の経営を貫いている点だ。つまり「社員良し、顧客良し、地域良し」という経営の徹底ぶりである。

 例えば、一歩足を踏み入れればすぐにわかることだが「これが自動車教習所か」と勘違いするほどの多様なサービスが存在し、ハートフルな空間がある。「それはまるでホテルのよう」といっても過言ではない。

 また、地域社会に対する貢献も見事で、ほぼ毎月、地域住民を対象にした面白イベントを実施している。ちなみに夏休みに施設内で開催される「花火大会」の入場者数は1万人をはるか超すほどの盛況ぶりで、今や地域住民の楽しみの一つになっている。加えて言えば、地域社会からの要請を受けて障害者雇用にも尽力している。

 ともあれ、こうしたことが自然にできているのも、社員の採用と育成に多くの時間とコストを投下してきた結果、人柄の良い、感性の高い社員が多数育ったからだ。

 ちなみに同社の社員1人当たりの年間教育訓練費は約30万円である。全ての産業の盛衰は「人財力」にあることを示す、いい事例だ。

 

<執筆>

法政大学大学院政策創造研究科教授、アタックスグループ 顧問 坂本光司

 

2015年1月28日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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