知恵の経営

第46回

環境変化好機に顧客創造

アタックスグループ 2015年11月25日
 

 東京モーターショー2015を10月末に視察した。燃料電池車(FCV)や自動運転といった最新技術を盛り込んだ車が多く「環境と安全」を前面に打ち出していた。自動車産業は環境と安全を切り口とした開発競争が一層激化するだろう。

 ところで企業は環境適応業といわれる。絶えず変化する経営環境に合わせて顧客を創造することが環境適応だ。そのためには企業はマーケティングとイノベーションという2つの基本的機能を磨かなければならない。

 マーケティングは市場の要求を探る活動で、ドラッカー流に言えば、誰を顧客として何を提供するのか、顧客が認める価値は何かを追求することだ。この点トヨタ自動車は環境を意識したFCV「MIRAI(ミライ)」をすでに二酸化炭素(CO2)を出さないエコカーとして発売したが、さらに燃料電池で作った電気(エネルギー)を家庭で使える車「エネカー」を提案し、環境に敏感な顧客層を取り込もうとしている。地球温暖化対策であるCO2の削減は車作りの課題でもあり、いずれ強化される規制への備えだろう。

 一般論だがマーケティングは社会的に顕在化または潜在する問題を探り、解決策を見つけ出す行為である。世の中に存在(顕在・潜在とも)する「不」(不便・不満・不安の解消)、「安」(安心・安全)、「楽」(楽しい・楽になる)の解決に役立つ物やサービスを考え出すことだ。経済が発展するにつれ、物やサービスに対する消費者のニーズは「モノ」から「コト」さらには「ココロ」へと変化する。

 一方、イノベーションはより良く、より経済的に商品・サービスを提供する手法を考え出すことだ。「経済発展の原動力である」と言った経済学者、J・シュンペーターは、イノベーションを、(1)新商品の導入(2)新しい技術・生産方法の導入(3)新市場の開拓(4)新原料の導入(5)新しい経営組織の実現-の5項目で定義した。

 (1)、(2)、(4)は技術革新によるところが大きく、わかりやすく、例えばシェールガスやシェールオイルは採掘法の発明による新原料導入に当たる。

 (3)は技術革新とは直結しないが、従来とは違う新しい眼で市場を開拓することだ。「エスキモーに冷蔵庫を食品の凍結防止用に売り込むことに成功したセールスマンはイノベーションの担い手である」(ドラッカー)

 (5)も立派なイノベーションだ。ヤクルト本社がインドネシアなどでも成功している「ヤクルトレディ」による職域訪問販売システムはこの例だろう。

 経済のグローバル化、インターネットの普及、少子高齢化・地球環境問題への関心の高まりといった時代のトレンドや環境変化を好機ととらえ、マーケティングとイノベーションの活動を行い、顧客創造・販売拡大を指揮することは経営者に課せられた使命である。

<執筆>

アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2015年11月25日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載


 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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