知恵の経営

第70回

独自豚の直売でファン拡大

アタックスグループ 2016年5月18日
 
 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を上げている中堅中小企業を紹介している。今回は、種豚育成からハム・ソーセージなどの食品販売まで、完全一貫経営を行う埼玉種畜牧場サイボクハム(埼玉県日高市)の池クジラぶりを見ていきたい。

 同社は1946年9月、フィリピンの激戦地から5年ぶりに生還した笹崎龍雄氏が創業した。祖国のあまりの荒廃ぶりに涙が止まらず、「食こそ人間の根本」と考え、自ら農業経営に乗り出すことを決意した。

 当初は乳牛・豚・鶏を事業の3本柱にしたが、農業組合法人でなく株式会社としてスタートしたため、国からの補助金や低利・長期の融資制度を受けることができなかった。経営は苦しく、酪農・養鶏を閉鎖、養豚に社運をかけ、豚の育種改良に取り組む。ついに75年、おいしさを突き詰めた「サイボクゴールデンポーク」を完成させた。養豚事業は軌道に乗ると思われたが、当時の食肉流通業者の格付けに「おいしさ」の物差しがなく高い評価を得られなかった。

 直接消費者に問うしかないと75年、牧場内のわずか6坪(約20平方メートル)のミートショップで直売を始めた。「新鮮でおいしい、牧場の生産直売は珍しい」「肉がおいしい」と口コミが広まり、小さいながらも地域の人気店になった。

 その後牧場内に、豚の精肉やハム・ソーセージの加工場、直売スーパー、レストラン、カフェテリア、野菜・花・米を中心とした農産物販売所、天然温泉、ミニ・ゴルフ場などを追加していった。今や年間380万人が訪れ、「農業のディズニーランド」と言われるまでになった。豚の種畜を「豚のテーマパーク」に発展させたのだ。
 
 笹崎氏の信条は「食という字は、人に良いと書くが、おいしい・安心・安全・新鮮・本物であれば、地域の生活者が黙っていても育ててくれる」だった。本物であることを証明するため世界最大で最も歴史と権威のあるDLG(ドイツ農業協会)の国際食品品質競技会に挑戦している。99年から13年間連続して金メダルを受賞、2011年秋には最優秀ゴールド賞をアジア地域で初めて獲得した。

 「緑の牧場から食卓へ、おいしい・安全・安心な商品を届けたい」という信念を貫き通し、おいしさにこだわって独自のブランド豚を生み出し、牧場の生産直売にもこだわり続けた。

 その結果、「サイボクハムファン」という小さな池の巨大なクジラとなったのだ。
 <執筆>
 アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
 2016年5月18日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載
 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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