知恵の経営

第90回

「ESなくしてCSなし」

アタックスグループ 2016年10月26日
 
 独自の「池(市場)」を見つけ、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を獲得・維持している中堅中小企業を紹介している。今回は介護福祉サービスのステラリンク(愛知県一宮市)の池クジラぶりをみていく。

 筒井健一郎社長は東レ入社後、訪問販売員やトラックドライバーなど多くの職業を経験した。1983年、35歳で物流会社を起業したが長時間労働による労働争議で、48歳の時、会社を去る。この反省から人を幸せにする経営、働きやすい職場づくりの重要性を心底理解した。

 2年間の無職生活を経て、92年2月、ステラリンクを設立した筒井社長は、利用者満足度(CS)と社員満足度(ES)の両立を決意した。同社の中核は延べ床面積約4300平方メートルと日本最大級を誇る「たんぽぽ温泉デイサービス一宮」というデイサービスセンターで、CSの源だ。「訪れた人がみんな笑顔になる、介護のディズニーランドを目指す」という社長の思いが込められ、年間7万8000人、1日当たり平均約250人の利用者がやってくる。

 施設は2階建て。1階の広い空間には、利用者が仲間と談笑したり食事ができるフリースペースがあり、2階にはパチンコ、囲碁、将棋、マージャン、カジノ、カラオケ、英会話、パソコンなどの「ルーム」(個室)が設置され、250種類ものリハビリプログラムがある。利用者は、自分で1日の過ごし方を自由に組み立て、プログラム利用には施設内通貨「シード」を使う。例えば2階にある約100メートルのリハビリ通路を、徒歩で一周すると100シード、車椅子でなら300シード支給される。カジノなどでシードを使い果たせば“破産”する。
 この種の施設はCSが高い半面、社員が疲労困憊(こんぱい)というところが多い。同社は利用者に大きな自由度を与えているだけに、社員の負担は重くなりがちだが、離職者はほとんどいないばかりか、他の施設で疲れ果てた求職者の入社希望も多い。この問題を解決できているのは「ESなくしてCSなし」「ディズニーランドのように、笑顔でキャスト(社員)が働ける環境づくり」という経営方針の下、自社開発した「SMILEシステム」による効率化によって、ESが高いからだ。

 620人の社員中、9割以上が非正規の女性社員。業界平均の約5割と比べるとかなり高いが、ここに秘策がある。女性社員は出産・子育てに課題がある。子供が急病になると電話一本で休め、残業ゼロも徹底している。スタッフ専用託児所も設け常に人員を多めにして柔軟にシフト管理をしている。

 筒井社長は非正規社員を厚くすることで、サービスレベルを高く維持することに成功した。

 介護業界の常識を覆し、社員が離職しない環境を整え、利用者主導の巨大デイケアサービスという池を創りあげ、その池クジラとなった。
<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2016年10月26日フジサンケイビジネスアイ掲載



 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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