知恵の経営

第86回

独自のめっき技術で市場開拓

アタックスグループ 2016年9月21日
 
 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となって高収益を獲得・維持している中堅中小企業を紹介している。今回は表面処理や各種電気めっき、化成皮膜処理などのめっき加工で高いシェアを獲得している、清川メッキ工業(福井市)の池クジラぶりを見ていきたい。

 現会長の清川忠氏は電話帳で福井市内の企業数の一番少ない業種がめっき業だと知り、3年間めっき工場で修業した後、1963年3月に夫婦2人で創業した。当初は自動車関係の再生部品や、オートバイの車輪を支えるリムのめっきを主に手掛け、70年代半ばにはバイクのホイールとリムの加工で国内シェア70%をとった。

 しかしリム加工の需要が減退したことから、新分野への進出を決意。たまたま電子部品のめっきが伸びると知り、細かい電子部品などをまとめてめっきできる「バレル電気めっき」法に挑戦。ちょうど大手メーカーから、「電子基板に使うチップ抵抗器にめっきできないか」という依頼が舞い込んだ。新分野への挑戦途上だったが、「できます」と即答した。

 その新たな技術開発のため、82年に社内に化学技術研究所を開設。分析、解析、測定などの各種装置をそろえて体制を整えた。社員の7%を研究所に所属させ、さらに研究開発人材の育成に積極的に取り組んだ。中堅社員が講師となり品質道場を開講。めっき技術の標準化に取り組み、職人技のマニュアル化も成功させた。一方で、めっき技能士などの国家資格取得体制を整え、社員の約70%が取得するなど教育と技術の安定化を図った。
 長男の肇氏(現社長)が入社したのを機に、技術開発のため産学連携も積極化させた。高価な分析装置を使えるメリットは大きく地元の大学や工業技術センターなどに足を運んだ。共同研究から生まれたのが独自の「ナノめっき」(10億分の1メートル単位のめっき加工)だ。年間約1000億個に及ぶ、ナノめっき部品の不良品はほぼゼロとなっている。

 同社の技術力に期待して、日本全国から難易度が極めて高いめっき加工処理の依頼が寄せられている。清川会長は、「技術開発は常に時代に先行することが重要で、あきらめない『根気』と、既成概念に捉われない自由な『発想力』が最も必要」「新しいものに対応する技術を率先してやらないと次世代の仕事が取れない」と言い、常に先を見据えた研究開発に取り組んできた。こうして医療分野・自動車用半導体分野へと新市場の開拓を進めている。

 同社は過去の常識を覆し、その高い技術力で顧客の課題を次々と解決する新技術開発に挑戦、他社がまねできない製品の小型化、省資源化、省エネ化に対応できる高品質めっき加工処理という「池」を創り上げ、その池クジラとなっている。
<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2016年9月21日フジサンケイビジネスアイ掲載







 
 

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