知恵の経営

第47回

「感動分岐点」顧客増やす鍵

アタックスグループ 2015年12月2日
 

 「感動分岐点」という言葉を、はままつフラワーパーク(浜松市西区)を運営する浜松市花みどり振興財団の塚本こなみ理事長の講演で知った。経営にも損益分岐点があるように、サービスにも顧客に「この程度でないと感動しない」と思ってもらう、分岐点があるという。

 はままつフラワーパークは、市制施行60周年事業の一環として1970年9月10日に開園した植物園。全国に104カ所ある国公立植物園と同様に赤字経営が続き、“感動”という意識は薄い部分があった。特にここ十数年は、2005年に「浜名湖花博」の跡地に開園した「浜名湖ガーデンパーク」が入園料と駐車料金を無料にしたこともあって客足が遠のき、12年の市の負担は100億円を超え、閉園の危機にさらされた。

 自力再建を断念した浜松市が理事長を公募、13年に就任したのが塚本氏だ。これまでにも赤字経営だった「あしかがフラワーパーク」(栃木県足利市)を園長就任後1年で黒字化させ、入園者を5倍に増やした実績があった。

 まず、売り物とコンセプトを明確にし、圧倒的に魅力あるものを一つ作ることに取り組んだ。社員と考え出したのが「世界一美しい桜とチューリップの庭園」だ。桜やチューリップがそれぞれきれいに咲く場所はあるが、同時に見られる場所は多くはない。同時に楽しめる期間はわずか2週間。それを強みとした。

 800円と均一だった入園料にもメスを入れた。過去10年間の入園者数を調べると、3~6月に全体の45%を占め、7~9月は毎月2%しかない。多くの花が咲き、入園者数が多い3~6月は花の咲き具合によって600~1000円、7~9月は無料、10~2月は500円とし、それに園内で利用できる「お買物券」500円分を付ける変動制にした。

 年間20万人だった入園者は、理事長就任1年目で40万人、2年目には77万人と急増。7~9月も入園者数や売り上げが2倍に増えた。レストランでの食事や買い物が増えたためだ。

 塚本氏が目指すのはもう一度来たい、この美しさを誰かに伝えたいと思わせる「感動分岐点」を超える園づくりという。人の心を震わせる感動分岐点を超えることで、料金が多少割高でも、入園者は増える。

 「感動分岐点は誰もが持っている。それを超えるためにも、今後もプロとして、しっかり結果を出さなければと日々取り組んでいる。商品と価格が一致すれば、お客さまは来ると信じている」と塚本氏は語っていた。

<執筆>

アタックス研究員・坂本洋介

2015年11月25日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

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顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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