知恵の経営

第60回

高い地域支持率持つ小売店

アタックスグループ 2016年3月9日
 

 大手総合スーパーですら出店より退店が増えている近年、退店はほとんどないばかりか業績も長期間、快進撃を続けるスーパーマーケットがマルトグループ(福島県いわき市)だ。食品スーパーを核にドラッグストアや衣料品店、酒小売店などを展開する小売業である。

 設立は1964年。現社長の父である安島裕司会長が27歳のとき、祖父から引き継いだ雑貨商を事業転換し、広さ20坪(66平方メートル)の食品スーパーとして再スタートした。安島会長の父親は病身で、祖父が雑貨商を開店し家計を支え、安島会長は幼い頃から祖父を手伝った。中学校3年生のときには年老いた祖父からバトンタッチし、社長業を兼務していた。登校前に開店の支度をし、帰宅して再び会社という生活だった。

 懸命な努力が実り従業員は非正規社員(タイム社員)を含め2200人、売上高約800億円、店舗数約100店舗といわき市最大の小売業に成長した。

 驚くのは地域住民の支持率を表す商圏内売上高だ。食品と薬のシェアは何と50%。周辺には全国チェーンの大手スーパーや他の中堅スーパーが多数立地していることを考えると、この占有率は驚異的である。

 成長の要因は多々あるが、あえて一つだけ挙げれば、経営目的が地域住民など関係者の高い支持を受けてきたことだ。

 社是は「商売とは心からありがとうと言って下さるお客様という名の友人をつくること」とある。経営理念は「幸せを創造する企業づくり~公平・公平・公明~」、基本姿勢は「地域のライフラインを守るのが使命と誇りです」とあり、このための5つのテーマ(顧客満足・従業員満足・取引先の満足・地域住民の満足・関係者の満足)を高らかに掲げている。

 こうした経営の基本的な考え方が、見事に実践されたエピソードを紹介する。東日本大震災のとき、地震により多くの従業員が自宅などを被災したばかりか、同社も多くの店舗が被害を受けた。被害総額は10億円以上になったという。しかしながら同社の1店舗は、地震発生の日の夕方から、残りの全ての店舗も、翌日にはオープンしたという。しかも通信網や交通網が不通の中、開店は各店舗の従業員が判断したという。

 大半の店舗の開店には数週間を要したが、マルトではすぐに被害の少なかった社員とその家族が店に駆けつけ、いてつく寒さの中、列をなす地域住民のために商品を提供し続けた。もとより納入業者も誠実に取引してきた同社に、商品を搬入し続けたからである。

<執筆>
 アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2016年3月9日 「フジサンケイビジネスアイ」掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

コラム 知恵の経営

同じカテゴリのコラム

コラム検索
ビジネスカレッジ(IBCセミナー)

一覧へ

シアタースタイル アルティメット 究極のプレゼン塾

二代目社長育成講座