Catch the Future<未掴>!

第32回

生成AIで価値を付け加える

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



このところ「新しい資本主義」について考えています。資本主義は今と昔で、といってもつい20年前(場所によっては10年前だったり30年前)という短い時間軸で大きく変化しています。「お金」が管理されている(使い手がその価値を変えることができない)ものから、管理されていない(使い手が価値を変えられる)ものに変化しつつあるのです。


そのような世界で生きていく方法の一つに、自らが提供する製品・サービスの価値を高めるアプローチがあります。前回は「価値を付加していく」方法を考えました。今回はそれを実現するツールを考えます。価値を付加するツールとして、ここでは生成AIを考えます。最近、話題に上ることが多くなったChatGPTなど、人工知能を使って情報を生み出すツールです。



生成AIを使って生産性を向上させる

生成AIをどう受け止めるか?「この台頭により、既知の情報をもとに行う仕事がAIに取って代わられる」という考察が先行して浸透したと感じています。会計事務のようにルールに則った記入・計算を行うとか、事実を規定に沿った形で表現するなどの作業は、そのうちにAIに切り替わる、人間の仕事ではなくなるという捉え方です。実際に起き得る現象のように感じられます。


例えばマネジメントについて考えてみましょう。会計部門で働く部下が間違いを犯した時、間違いを認識して指摘、適切な計算方法を教えたり正しい答えに訂正したりする仕事は(よほど算術に長けた人は別として)人間よりもAIの方が長けているでしょう。部門管理という仕事の意味が「部下に正しい仕事をさせる」であれば、AIに取って代わられる可能性が高いと思われます。


これが今、生成AIに対する主なる期待だと考えられます。実際、生成AIを導入すれば飛躍的に手間や時間を削減できる仕事は多いと考えられ、その効果は大きいでしょう。それに加えて日本では経理などの間接業務が企業間で統一化されておらず、企業毎に異なったやり方で行われていることに起因する非効率が多いと考えられます。


生成AIが提案する効率的な業務方法を活用することによって自然に促される、業務標準化による効率化も顕著に表れると考えられます。世界的に低水準にあるホワイトカラーの生産性も向上すると期待されます。



生成AIにより価値を付け足す(創造性を発揮する)

このように生成AIは仕事効率を目覚ましく改善するツールですが、今回は別の側面を考えたいと思います。「価値の付け加え」に係る側面です。


仕事する上での価値の付け加えとは何か?マネジメントなら、部下がモチベーションを維持できるよう、より高いモチベーションを持てるよう動機付けすることが挙げられます。仕事が困難でなかなか成果が出ない時、失敗が続く時、人は誰でもモチベーションの維持・向上を困難に感じます。部下がそんな状況に陥った時に察知して的確な声掛けや方向性の提示、行動への促し等を行なって結果を出せるようにアシストすることで、モチベーションを維持・向上させることは、マネジャーの重要な役割の一つです。これを生成AIでもって実現することは難しいでしょう。この場面ではAIがマネジャーに取って代わることはないと考えられます。


但しマネジャーがこの役割を果たすにあたり間接的に生成AIを活用することは可能でしょう。部下が落ち込んでいる時に適切な指示や声掛け、アドバイス等を行なうのはとても高度なマネジメントで、時間をかけて熟考・準備する必要があります。他の軽微なマネジメントではAIを利用して省時間を実現、高度なマネジメントのために十分な時間を利用できるようになると考えられます。


また支援が必要な部下のあぶり出しや状況の的確把握、適切な声掛けや方向性の提示、行動への促し等に関するヒントを生成AIから得られる可能性があります。


インターネット上にはマネジメントに関する情報が無数に存在しますが、活用は今まで困難でした。検索という手法ではユーザーがキーワードを知っている必要があるため、知らない人は有用な情報にアプローチできなかったからです。生成AIにより、キーワードを知らなくても自分が欲しい情報をインターネット得られるようになりました。この効果は、とても大きいと考えられます。


以上から、生成AIの活用により生産性の格段な向上が可能になると理解できるでしょう。間接業務の省力化もかなりの成果ですが、価値を加える高度な利用法を活用すれば成果は格段に拡大します。逆に言うと、活用しない企業はどんどんと差をつけられてしまいます。


次に来る新しい世界(未掴)を取り逃がさないように是非、生成AIの活用にも前向きに取り組みたいものです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は写真ACから ACworks さんご提供によるものです。ACworks さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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