Catch the Future<未掴>!

第5回

第5世代を担う「ティール組織」

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 今後、日本は “Society5.0”への進化を目指すと政府は提唱しています。農業社会から工業社会に移行しようとした産業革命時、以前の社会にこだわり過ぎた人々が後々、不利な状況に甘んじたことは歴史が示す通りです。同様に現在も、”Society5.0”の本質を捉えて社会の質的変化に対応することが大切です。


 「分かっているよ。私たちも”Society5.0”を目指して頑張っているが、なかなか上手くいかないのだ」そういう声も、聞こえてきそうです。なぜ、”Society5.0”への移行が容易でないのか?その一つとしてインフラが整備されていないことが挙げられると思います。今日はその点から、考えてみます。



新しいぶどう酒は新しい皮袋に

 「新しいぶどう酒は新しい皮袋に」という言葉を、皆さんも耳にしたことがあるでしょう。物ごとを改革する時、中身だけでなくインフラも変える必要があるとの警告です。企業の変革時も同じことが言えます。“Society3.0(工業社会)”もしくは“Society4.0(情報社会)”で活躍してきた企業が“Society5.0(自働化社会)”でも地歩を固めたいと思うなら、組織そのものが変化しなければなりません。


 では、組織はどのように変遷するのか?その答えはフレデリック・ラルー氏のベストセラー「ティール組織(原題:Reinventing Organizations。)」から学ぶことができます。この本は、まず、組織を5段階に分類しています(各段階の表現は筆者による)。


第1段階:レッド組織(衝動型)

 特定個人の圧倒的な力により統率される組織


第2段階:コハク組織(順応型)

 計画に基づく上意下逹で統率される階層構造組織


第3段階:オレンジ組織(達成型)

 仕事の方法・インフラ等に対応した構造で、合理性や成果を重視し、パフォーマンス向上を目指す組織


第4段階:グリーン組織(多元型)

 成果だけでなく働き手にも着目し、文化や価値観を共有しながら多様性が尊重される緩い階層構造組織


第5段階:ティール組織(進化型)

 組織を一つの生命体とみなし、個々に意思決定権を持つ構成員が全体目的実現に向けて自主的に動く組織



ティール組織を実現する企業

 「なるほど、”Society5.0”が実現するかは、ティール組織の会社が存在するかにかかっているという訳だ。」おっしゃる通りです。「日本にそんな会社、あるのか?」先日ある勉強会で「ティール組織」を実践する企業を率いる若い社長のお話を聞くことができました。


 その会社の名は「ダイヤモンドメディア株式会社」、不動産仲介やインターネットを活用したマーケティング等を行う会社です。「インターネットを活用したマーケティングは、確かに先端的ではあるが、珍しくはあるまい。」はい、業務は「特異」とは言えないでしょう。一方で、組織運営はユニークです。社員は自分の働きたい時間帯・場所で働くことができます。給料も社員が決めます。社長は「最大出資者やその代理人がなる」という常識を打ち破って持ち回り制です。企業の意思決定を経営層が決めて社員に従わせるトップダウンではなく、社員が自分で考え意思決定する「ホラクラシー経営」を実践しているのです。


 「おいおい、そんなことで、会社として機能していけるのか?」機能しているどころではありません。変遷の激しい市場で事業基盤を確保できない同業他社も少なくない中、当社は2007年に創業して以来、不動産オーナーや不動産会社等の「こんなサービスが欲しかった」を実現する仕組みを開発・提供して順調に業績を伸ばしています。

<企業URL> https://www.diamondmedia.co.jp



Society5.0がティール組織を必要とする理由


 「なるほど、ティール組織企業が日本にも存在することは分かった。我々に思いもつかないパワーを秘めているらしい。しかし何故、”Society5.0”にホラクラシー経営の実践が必要なのだ?」”Society5.0”の本質を思い出して下さい。それは「自働化」軸が加わった5次元社会です。誰かが願えば、誰かが「これを自分の仕事にしよう」と考えて実現してくれます。こういう自主性が、上位下逹組織で実現できるでしょうか?


 「なるほど、誰かの『欲しい』という想いに応えて自働的に実現させていく社会を構成する会社は、自働的に働く社員の集合体であるはずだと言いたいのだな。」その通りです。筆者は、そういう会社がもっと増えていくことが、日本の“Society5.0”化を推進する原動力になると考えています。将来が楽しみですね。



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


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プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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