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第24回

ChatGPTから5.0社会の「肝」を探る

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



最近話題のChatGPTは “Society5.0”を垣間見せてくれます。それが「自働化」軸が加えられた5次元社会であることを赤裸々に示してくれるのです。今回はそこから学ぶ5.0社会(本コラムでは“Society 〇.0”と“社会〇.0”を読みやすさ等を鑑みながら同じ意味で使っています)の「肝」について考えます。



5.0社会に移行することの意味合い

Society 5.0は、政府の発表では「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と説明されています。

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

政府の発表をただ読んだだけでは5.0社会についておぼろげのイメージは湧いても意味するところが分かりにくいのですが、分厚い資料をじっくりと読みこむと多少なりとも分かってきます。とはいえ、そこに書かれていることはスケールが大きく、それに関わるのは大企業だけで、中小企業や働く人々にとって「自分に関係のある話だ」とは受け取りにくいように感じられます。


では、Society 5.0は中小企業や働く人々にあまり関係ないのか?答えは逆です。社会が1.0から2.0、3.0、4.0と変わる時、大きな変革が起き、中小企業も働く人々も大きな影響を受けます。この状況は、最近に起きた4.0社会の出現を観察すれば理解できるでしょう。


「情報化社会」との言葉は1970~80年代に盛んに使われ、この頃に3.0社会から4.0社会への移行が進んだと考えられます。それまでは重厚長大な企業や、それら企業の投資を支える金融機関が大学生の人気就職先リストの上位に名を連ねていましたが、4.0社会に入ってからはIT関連企業が台頭しました。当初はハードウエア企業(コンピュータの組み立て、それも大型機製造を行う企業)が中心でしたが、次第にパーソナルコンピュータやソフトウエア企業、あるいはチップ製造企業にウエイトが移りました。


これは何を意味しているか?従来には活況を呈して高い給料を払っていた企業がだんだんと低調になって給料も冴えなくなり、中には倒産等してしまう企業も現れます。今までのキャリアや身に着けた知見・ノウハウ等を活用できる職場を探しても、もう見つからなくなる場合もあります。中小企業にとっての取引先も変わってしまい、あるいは発注元企業が失われてしまう場合もあるのです。



5.0社会の申し子としてChatGPTが教えてくれること

ChatGPTは、質問に文章で答えてくれるAIです。インターネット上にある膨大な情報を統計的に処理し、質問との関連度が高い用語を核として、文章としてまとめてくれるのです。「イントロ」、「項目(多くの場合3~8)」、「結語」と、欧米式の論述答案で求められる形式に則っているので、質問を工夫すれば大学・大学院での試験にもパスする水準の回答になり得ます。


試しに「織田信長はなぜ明智光秀に暗殺されたのか?」と質問すると興味深い回答が得られました。一方で、「明智光秀はなぜ織田信長に暗殺されたか?」と質問しても同様の回答で、「明智光秀は織田信長に暗殺されていません」と指摘することはありません。正誤や善悪を判断する拠り所をChatGPTから得るのは、今のところ無理なようです。


「常識的なまとめは得意だが正誤の判断はできない。『問題・課題解決の場面で万策尽きたと感じている。ユニークなソリューションが欲しい』と望んでも難しい、とは、子供のおもちゃのようだ。」そうでしょうか?自分が思いついたユニークなアイデアをレポートしようとする時に、それだけを書いたのでは「奇想天外すぎる、にわかに信じ難い」と拒否反応が出そうな時、「常識を新たな(しかし納得のいく)観点でまとめ直し推論し直せば、ユニークなアイデアに行き着く」という文脈で説明しようと検討する場合には、質問を工夫することで、有益な示唆が得られるかもしれません。


以上からChatGPT、ひいては自働化軸が加わる5.0社会の「泳ぎ方」がうかがえます。相手は莫大な情報を手際よく処理する天才だが、正誤や善悪については幼児以下の秘書のようなものです。後者を考えるために使うと最悪な結果に陥る可能性がありますが、前者の目的なら他では得難いアシスタントになり得ます。つまり「何を質問するか」あるいは「何を依頼するか」が肝なのです。


「様々試したがダメだった。万策尽きた」と感じる時も「何か、皆にとって当たり前なのに私が忘れていることはないか」と探ると、答えが見つかる可能性があります。深堀して対話するうちに自分に新たな視点が加わったら、その眼鏡で見るとモノゴトがどう見えるのか質問することで、新たな答えが引き出せるかもしれません。


相手はユニークなアイデアを提示することはありませんが、そこから自分自身がユニークなアイデアを紡ぐことは可能です。それをできるようになることが5.0社会の「肝」であり、上手い泳ぎ方に繋がると考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています


本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>



なお、冒頭の写真は写真ACから Haru photography さんご提供によるものです。Haru photography さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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