Catch the Future<未掴>!

第9回

新しい世界を掴む年にしましょう

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2023年の幕が上がりました。多くのビジネスパーソン(経営者・従業員・個人事業主)が「今年こそ、景気の良い年になって欲しい」とお考えのことでしょう。2020年に始まったコロナ禍は4年目に突入、昨年2月から始まったロシア・ウクライナ戦争の影響も相俟って物資の不足や価格高騰をもたらし、日本経済は元気を取り戻せずにいます。「今は仕方ないけれど春には景気が上向きになり、年が終る頃には『2023年は分岐点になったね、景気が上向いて良かったね』と言えるようになりたい」との気持ち、誰でも抱いているのではないでしょうか。



果報は寝て待つのではなく掴むもの

一方で本コラムは「未来は明るい情勢になって欲しい」と願うだけの姿勢から、一歩踏み出したいと考えています。「未来」という言葉は「来るはずのもの・状況などが未だ来ていない」ことを意味します。「待っていれば、そのうちに来るだろう」あるいは「なかなか来ない、なぜこんなに遅れるのだろう?じりじりする」という姿勢です。


これに対して、本コラムのタイトルは「未掴」です。「期待するもの・状況などは自らの手で掴んでいく」という姿勢をベースに、「期待するもの・状況などを未だ掴むことができなければ、どうすれば掴むことができるか、探り、トライして、掴む」という気概を持った心境です。


「そんなにガツガツして何になる?『果報は寝て待て』だ。努力して多少早く手にするよりも、寝て待っていたらいつの間にか手に入った方が効率的ではないか」というご意見も、あるかもしれません。しかし本コラムでは、その考えに基づくと危険ではないかと考えています。期待するもの・状況が、得られない可能性があるのです。


日本のホワイトカラーあるいは日本全体の生産性は、先進国の中でも段違いに低いというレポートがあることを、皆さんもご存じでしょう。その差が生まれる要因の一つにITテクノロジーの導入姿勢があると言われています。日本を超える生産性をあげる国々ではITテクノロジーを積極的に利用しているが、日本での利用は低水準に留まるという現象が生じています。例えばある上位のマネジャーが「自分はZoomでの会議は好きではない」とリアル会議を主張、自宅からの参加なら省略できる時間や労力が必要となるとすれば、それは生産性向上を掴むチャンスを放棄したことを意味しています。



掴もうとしなかった人の結末

社会が変化しつつあるのに、それを掴もうとしなかった人はどうなるか?「結局、変化恩恵は受けられるのではないの?」とお考えの方も、おられるかもしれません。しかし歴史は、社会変化はそれが起きている時には全ての人に恩典を与える訳ではないことを教えています。時間が経てば全ての人に普及しますが、変化がリアルタイムで起きている時には恩恵に与れる人と与れない人がいるのです。


産業革命時代に「蒸気を動力にするだって?自分は反対だ。今までの水力に(馬力に、人力に)頼る」と言った人は時代から取り残されました。それまでのパラダイムで興隆を誇った人々も、あっという間に蒸気機関を活用する新興勢力に追い落とされて、没落したのです。「蒸気機関があまねく行き渡り、社会の全てに恩恵をもたらした」のは、こうやって社会階層の逆転(レボリューション)が実現した後だったのです。



掴もうとする人になるために

では、どうすれば「掴める人」になれるのでしょうか?左例ではITを活用できる人になる必要があります。但し、ITを利用する人が全て「掴める人」になれるかというと、微妙だと思われます。IT利用は世界では当たり前なので、それだけでは先行者利益は得られません。「遅れてはいない人」になれる程度です。「掴める人」になるためにはプラスアルファが必要と考えられます。


プラスアルファとは何か?それはイノベーションです。「イノベーションなんて、そんな大そうなことは無理!」もちろん社会を変えるイノベーションは簡単ではありませんが「自分の周囲にある世界(家庭生活、社会生活あるいは仕事など)」を変える身近なイノベーションにより新しい世界を掴むことができます。


ITが活用される前に当たり前だった「もの・こと・仕事等」をIT利用により革新し、かつてないベネフィットが得られるかもしれません。Zoomや遠隔業務システムの活用で「通勤」を不要にした企業の中には、従業員満足と業務効率化の二兎を仕留めるイノベーションを達成した企業があります。


中小企業にも可能なイノベーションとして何があるのか、それはどのようにして実現できるか、実現に必要な思考法は何か等々について、皆さんも興味をお持ちでしょう。2023年は月に2回の未掴コラムで、実践例を検討すると共に、飛躍を可能にした思考法などについても考えていきます。乞うご期待!




<本コラムの印刷版を用意しています>


本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は写真ACから カメラ兄さん さんご提供によるものです。

カメラ兄さん さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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