Catch the Future<未掴>!

第52回

新政権に期待すること

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



岸田前首相が辞任、石破氏が自民党総裁そして第102代総理大臣となりました。新政権には様々な期待が寄せられていますが、本シリーズコラム「未掴」からも期待をまとめたいと思います。



日本が豊かになる2つのアプローチ

前月まで、日本が復活するためには外貨を稼ぐことが必要とご説明しました。

これを分かりやすく家庭の例で考えてみましょう。夫婦が共に働きに出て収入を得て、衣食住に必要な物資等を購入している家庭は、互いに協力し合いお金を回すことで、より豊かな生活を実現できます。夫婦が今まで家庭内の仕事を分担していたが、今後は相手の仕事を担った場合には対価を払うと、各個人の使えるお金(フローとしてのお金)が増えます。子供も手伝って対価をもらうと、小遣いとしてもらっていた金額以上のお金を使うことができるようになります。

フローとしてのお金の増加には、家庭内のサービス総量を増加させる働きもあるので、豊かさに拍車がかかるでしょう。今、政府は賃金を引き上げるよう強く働きかけていますが、上のメカニズムを国家単位で働かせて国民を富ませようとしてのことと考えられます。


ある家庭が豊かになるためにはもう一つ、外からの資金流入を増やす方法があります。共に働く夫婦がより給料の高い仕事に就けば、当該家庭のストックとしてのお金が増え、衣食住に必要な物資等の購入量を増やす、あるいは購入する品のレベルを向上させることができ、豊かな生活を送ることができます。

もしこの家族が上のアプローチで家庭内サービスに対価を払っているなら、その対価をより高めることができるので、豊かな気持ちも高まるでしょう。


国を富ませる方法としての上の2つのアプローチは、どちらも有効です。但し、効果としては外部からの資金流入を増やす方が、より大きな効果をもたらし得ると考えられます。

逆にフローを増やす方法だと、上の家庭の例で言えば、家庭内サービスで得たお金を外部からのモノを買うために使うと、もう家庭内では回らなくなるという欠点があります。外部からのお金を導入することをメインに、域内のフローを回すアプローチも併用することが、国を富ませる原動力になると考えられます。



課題解決を売るシステムを造る

ここで国の問題に目を向け直しましょう。どうすれば海外からお金を呼べるか?第一に金利を上げることが挙げられます。今日本は長期間続いていた「金利のない世界」を脱却したので、この方法も使えると考えられるかも知れません。

しかし日本の金利は世界的に見るとまだまだ低水準で、世界からお金を吸い寄せられるほどの魅力はありません。吸い寄せられるほどの水準まで高めると、今度は国内の経済活動を阻害する可能性があります。金利による方法は使えないとみた方が良さそうです。


海外からのお金を流入させるもう一つのアプローチは、海外に財やサービスを売ることです。付加価値の高い商品やサービスを販売できると国内の関係者(企業・人)がより多くのお金を手にすることができ、国が豊かになります。お金の総量が増えると国内取引の価格も引き上げることができるでしょう。こうやって国全体の企業・人が何層倍にも豊かになれるのです。


では何を売れば良いのか?国際的に競争が激しい財やサービス売ろうとすると、豊かになる前に疲弊してしまう可能性があります。狙い目は「そんな財やサービスがあったか!今まで気が付かなかった。それが提供されるとは、少々高くても手に入れたい」と世界中の国々から声がかかるような財やサービスです。

それは多くの場合、課題大国である日本が世界に先んじて直面している課題解決に繋がる財やサービスでしょう。例として前回、自動運転システムと合体させることで自動車(トラック等を含む)を鉄道電車のように運行・管理できる道路交通網管理システムを挙げたところです。


以上のように考えると新政権への期待が見えて来るでしょう。例に挙げた道路交通網管理システムは、単一の企業では到底実現できません。自動車だけでなくITやセンサー、通信そしてシステム構築など様々な企業が合同する必要があります。道路を管理する行政や、高度な管理システムを考えるアカデミアの参画も必要です。

つまり日本の総力を挙げてとりくむ巨大プロジェクトです。それを始める旗振りが政府に求められています。それは即ち、政府が総力でもって取り組む必要があることをも示しています。縦割り行政では実現できません。横串を刺して知恵を結集する仕組みの創造から始めることが、日本にとって急務と考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は Copilot デザイナー により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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