Catch the Future<未掴>!

第2回

目の前にある5次元社会

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 未掴第2号にようこそ。今日は社会の5次元化について考えます。「5次元化だって?空想科学(SF)か?」いえ、この概念は2016年1月に閣議決定された情報に基づいています。「思いつかないが。」皆さんも目にしたこともあると思います、“Society5.0” のことです。



3次元社会までの進展

 先にも申した通り政府は2016年1月に「未来投資戦略 2018 ―『Society 5.0』『データ駆動型社会』への変革―」を発表しました。現代を “Societey5.0” と定義し、過去と全く異なる社会だと宣言したのです。

URL:https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index5.html


 過去についてSociety 1.0は狩猟社会、Society 2.0は農耕社会、Society 3.0は工業社会と定義しました。歴史を紐解くと、確かに人類はこの順番で生活基盤を進化させ、社会を発展させてきたことが分かります。


 「確かにそうなのだが、それが『次元』と関係するのだろうか?」このように考えてみてください。生活の糧の取得について、狩人と獲物の偶然の出会いに頼るがの狩猟です。偶然性を支配するのは時間軸、即ち1次元の社会です。農業を営むことで、生活の糧を得られる必然性が飛躍的に高まると共に、作付面積を増やせば収穫も増えるという構図も描くことができました。時間軸に規模軸を加えた2次元となったのです。農耕社会でも道具や設備などを生産してきましたが、工場生産が本格化したことで分業が確立し、一人で製造する場合に必要とする時間よりも短期間に大量生産することが可能になりました。工業社会とは、時間軸・規模軸に分業軸を加えた3次元社会だったのです。


4次元社会の進展

 “Society3.0”の次に来るのが“Society4.0”、つまり「情報社会」です。「Society4.0で何の軸が加わったか」と聞かれたら「情報軸」とすぐに答えられます。コンピューターの出現により、情報の重要性が、もっと言えば情報活用の重要性が高まったのです。


 情報軸が加わることで可能になったのは何か?無数にありますが、ここでは「シミュレーション」をご説明します。「工業社会」で複雑な形状の部材を組み合わせた機械設備を完成するには無数の実験が必要でした。部材の一つ一つを現物でもって組み合わせていくので莫大な時間と人的資源・物的資源・資本、そして高度な作業技術・ノウハウ等が必要とされたのです。しかしコンピューターを活用した3D-CADによるシミュレーションが、事態を一変させました。現物ではなく「情報」で試行錯誤をすれば良いので費用がかからず、試行回数を飛躍的に増やせます。おかげで改善レベルが飛躍的に向上しました。また成功ノウハウをデータとしてマシンに記憶させられるので、人的資源・物的資源・資本を極限まで活用できるようになりました。



Society5.0を5次元社会として捉える

 では目前にある”Society5.0”とは、どんな社会なのでしょうか?内閣府の資料では「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステム」と説明され、鍵は「サイバー空間」と言えそうですが、4次元社会の次に来る社会を考える時、軸が「空間」では本質が見えて来ないと感じます。では本質は何か?筆者は「ITを活用した自働化(他人能力・仕事・成果の取り込み)」と考えます(この説明は次回とします)。


 IT自働化の典型として「クラウド・サービス」が挙げられます。Amazonで買い物すると履歴から次のオススメ商品が提案されるのは有名です。会計処理を例とすると、伝票の写真をアップすればデータ化して会計ソフトに入力してくれ、アイコンを押せば財務諸表をアウトプットしてくれます。融資を申し込むとAIを活用して財務情報や銀行取引情報を分析、ほどなくして融資審査が修了してお金が振り込まれるそうです。


未掴としての5次元社会

 情報化やIT自働化は最近に起きた事象なので、多くの人々にとって「未来(誰にも来るFuture)」ではなく「未掴(掴む者にだけ来るFuture)」です。パソコンは、情報化(Society4.0)やIT自働化(Society5.0)ツールの典型例ですが、Web上の動画を閲覧し文書を印字するだけでは、テレビや手書きの代用品に過ぎません。そんな使い方しかしない人はSociety3.0の住人です。 


 「そういう使い方で、何が悪い?本人の勝手だろう。」そう言えない事態が生じています。先ほどIT自働化の一例として挙げたAmazonは、オススメ商品の提示を初めとして無数のIT自働化を活用して流通業を席巻、ここ日本でも従来型書店などに大きな打撃を与えています。その現象を食い止めるには、私たち自身がIT自働化の本質を把握し第5軸として取り入れ、飛躍的なパフォーマンスを手に入れること、つまりSociety5.0の住人になることが必要なのです。    



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


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プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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