Catch the Future<未掴>!

第60回

社会システム視座の必要性

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



今年はどんな年になるのか?ニュースでは賃上げや日銀による金利引上げ、あるいは始まった国会での予算審議などが報道されています。これらが、今年がどんな年になるのかを決める重要な要素であることは、確かです。一方で、中長期的な視野で「今年をどんな位置付けにするか」も重要ではないかと思います。今回は、「社会システム」視座で検討することの必要性を考えます。



IT・Ai等トレンドが及ぼす影響の奥底にある問題

上に挙げた以外に、自動車の自動運転等を含むITやAi、特に生成Aiについて話題にならない日はありません。将来に永く影響を及ぼす点では賃上げや金利・年度予算以上と考えられ、「ある職種の仕事がなくなる」との指摘が大きく取り上げられています。

高確率でなくなるとみなされているのは、社会にとっての重要性が既に低下しているとみなされている仕事ばかりではありません。その逆で、大切で「なくては困る」と感じる仕事がほとんどです。

そして(筆者の感触ですが)仕事の全体像を検討した上で判断されている訳でもないようです。当該仕事の一部作業等については人間が行うよりAi等で行った方が効率的という趣旨だと思われますが、仕事の全体像でみると人間が行った方が良いと思われる仕事も「なくなると考えられる仕事」だと指摘されています。


例えば法律相談について。巨大なデータベースから類似案件を探し出してアウトプット、結論を推察するとの側面だけを見ると、Ai等で行った方が効率的かもしれません。

しかし法律相談の根源的ポイントは「相談事案は、既に事例のある事案と、どこが、どのように違うのか?」と見つけ出し、新しい判断を導き出すことにあると思われます。とすると現在のAi等活用のトレンドは細かい違いを切り捨てて、単一的な結論を出していくことに繋がりそうです。本当にそれで良いのでしょうか?

現在、法律相談においてAi等の利用が進んでいるようですが、このような求めを掬い取り多様な結論を導き出す必要性をあまり聞くことがありません。

しかし、特に海外との交渉・折衝において単一化戦略で対応すると確実に不利になるでしょう。多様化戦略で対応するには、Ai等を利用するにせよ新たな仕組みが必要になり、これを怠ると「負け組」は必至だと考えられます。


もう一つ例を挙げましょう。100%自動運転のクルマが実現された場合に、タクシー運転手が不要になるとの説があります。

では運転手のいないタクシーは、顧客が乗っていない時、流しをするのでしょうか?もししないとすると、タクシーはどこでスタンバイするのでしょうか?ある無人タクシーが都心駅に顧客を降ろすと、その駅でスタンバイするのが効率的と考えられますが、駐車場が一杯になり、一般客に迷惑だと考えられます。つまり駅そのものについても対応が必要になります。

トヨタが未来のクルマを軸とした未来の都市を構築する試みを進めていると報道されています。もしかすると、このような問題も含め、自動運転車やEV等の普及によるインフラをはじめとした生活の変化そのものについて、実験的に検討されるのではないかと期待しています。



IT・Aiを有利に活かせる社会システムを考える

IT・Aiの進歩は人々の生活に大きく影響を与え、それは社会の大きな変化にも繋がります。今回の記事では変化に受動態的に対応する必要性を考えましたが、能動態的な変化も考えられます。起き得る変化を私たちにとって都合の良いものにするため、設計するのです。

「IT・Aiを上手く活用して、今まで困っていた問題の解決に繋げよう。より広く多くの人々に、よりレベルの高い生活を提供する社会システムを考案しよう。もし当該システムを他国に提案できるなら、日本の新たなビジネス軸として展開しよう」と考えることが、日本全体として未掴を捉えるポイントになると考えられます。

「まだ早い、もう少し姿が見えてきたらで良いのではないか?」筆者は、別の意見です。ITやAiを最先端で進歩させている人々(海外が多いようです)は、自分たちの都合を第一に考えていると思われます。メリットを自分たちが最大限に刈り取れるように、IT・Aiの進歩そのものを設計しているのです。


今、提案しているのは次のグループとして応用面で設計することです。それさえ行わなかったらIT・Aiからメリットを享受するタイミングが遅れてしまうことを意味すると考えられます。

「そのうちに得られるなら少々遅れても良いではないか?」設計していれば得られたかもしれないメリットを受けられなかった時間は、永遠に戻ってきません。また、遅れによるデメリットを被る可能性があります。それをできるだけ短くすることがポイントだと考えられます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


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【筆者へのご相談等はこちらから】

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なお、冒頭の写真は Copilot デザイナー により作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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