Catch the Future<未掴>!

第11回

ミスコンから学んだ将来の掴み方(1)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



先日ある研究会で将来の掴み方として大変参考になるお話をお聞きしました。今日は、それからお話ししようと思います。その研究会はグローバル・マーケティングについて毎月1人の実践者から話を聞くことで、理論と実践の両面について学ぶことを目的としています。過去には名立たる大企業の経営者も壇上で話されたとのことでしたが、筆者が初めてご招待頂いたタイミングでは、2018年ミス・インターナショナル日本代表の岡田朋峰さんから「世界の美の競演~ミス・インターナショナル世界大会に参加して学んだこと~」と題したお話がありました。


多彩な内容で学ぶことが多かった中、今回は質疑応答の場面での岡田さんの答えに大変感銘し、ある意味衝撃を受けたので、その話を中心に「将来を掴む方法」について考えていきたいと思います。



ミスコンに参加するとは「価値創造に携わること」

「外面を審査するミスコンに批判が多いが、参加に当たりどう考えたのか」という質問に岡田さんは、まず「外面とは内面の一番外側」と答えました。そして「美しさには答えがなく、自らをどう美しくするかは自分で選ぶことができる。そのためミスコンとは美の創造力についての審査だと考えられる」、さらには「こう考えると、美しさのうち先天的なものは一部で、自らが選び身に着けていったものの集大成。ミスコンとは自ら考えながら努力を尽くしたことへの審査とも考えられないか」と答えました。これら一連の説明に、大きな衝撃を受けた次第です。


岡田さんは、ミスコンへの参加を価値創造に携わることと考えているようで、実際ミス・インターナショナル日本代表になった後の歩みは(ここでは省略しますが)、美にもっと多くの価値、社会を良くし、人を元気にする価値を付け加える創造活動と感じられました。


ミスコンに参加し入賞するためには、どうすれば良いのか?一つには、この世界にも「傾向と対策」アプローチがあるようです。最近時に優勝・入賞したミスの化粧や髪形等を真似し、歩き方や仕草等も取り入れ、スピーチの内容や話し方等をブラッシュアップしてより好ましいものを実現するのです。


一方で「オリジナリティ」アプローチもあるとのことです。自分という存在やこれまでの体験、それらを踏まえて身に着けた性格や考え方などをベースに「どのように自分を磨けばもっと美しい人になれるか」を問い、試行錯誤しながら努力を絶えず継続していくのです。その過程では「私はこんな人だ」という自覚を持つだけでなく「こんな人になりたい」との願望を抱くことや、「他人がもっているあんな良いところも、自分なりの形で持ち合わせる人になりたい」などの良い意味で羨みなどが積み重っていったことでしょう。


そのプロセスを真剣に取り組むことで、他の誰からの借り物でない自分らしさをもった美しさを実現するのです。岡田さんが考えるように捉えると、ミスコンは「他人との競争」というよりも「理想を実現しようとする真摯な試みについての評価」と言えそうです。



競争か、能力構築か、自分という存在作りか

このような捉え方は、ビジネスの場でも有効ではないかと感じます。私たちは、企業は、ビジネス環境の中で何を行っているか?「競争しているに決まっている」確かにそうですが、この競争は自動車レースのF1とは全く異なります。


F1のFはFormulaつまり規格を表しており、競争者全てが同じ基準で測られている土俵で勝負する、それがルールという意味です。しかしビジネスにおける競争にはルールも価値判断基準もありません。「そうなんだ、我々は競合と泥沼の競争、バトルロワイアルを戦っている。時として二進も三進もいかない時もある。」


しかしルールも価値判断基準もないというこの構図、ミスコンと似ていないでしょうか?すると「価値創造に携わっている。顧客に認められる価値を一番の外側に現わせられるよう、内面を磨いている。どんな価値を生むかには答えがなく、自分で選ぶことができる。自らが選び身に着けようとする価値を集大成するために、自ら考えながら努力を尽くしている」競争だと考えられます。


このアプローチ、実は日本は得意だったのです。2003年に発表された「能力構築競争(藤本隆宏著)」は、日本の自動車産業が品質や市場での優位性を持った理由としてカンバン方式やTQCなど生産システムにあると指摘しました。競争に勝利するに必要な発想として「他社を蹴落とす」思考ではなく、「生産・開発現場の総合的な実力を高める」思考が重要だと説明したのです。


今、企業を取り巻く競争では生産や開発だけに留まらず、間接部門も含めて企業全体の能力構築が問われていまが、構図としては同じと考えられます。この努力を「我が社の良さ(美)を、我が社なりの形で実現していく」と楽しみながら続けられる企業こそが、勝ち残っていけるとの示唆を、このセミナーから学ぶことができました。



(公式サイト)

グローバル・マーケティング研究会 http://gumaken.org/

岡田朋峰さん https://www.centforce.com/profile/t_profile/okadatomomi.html




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は写真ACから acworks さんご提供によるものです。acworks さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

中小企業診断士事務所 StrateCutions 代表
合同会社StrateCutions HRD 代表社員
落藤 伸夫

早稲田大学政治経済学部卒(1985 年)
Bond-BBT MBA 課程修了(2008 年)
中小企業診断士登録(1999 年)
1985 年 中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
2014 年 日本政策金融公庫退職
2015 年 中小企業診断士事務所StrateCutions 開設
2018 年 合同会社StrateCutions HRD 設立


Webサイト:StrateCutions

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