Catch the Future<未掴>!

第33回

生成AIで新価値を創造できる人になる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



ビジネスの世界における今年のキーワードとして生成AIを外すことはできないと思います。AIそのものにここ数年、関心が高まってきましたが、初めて生成AIに触れ「私のPCに質問したら答えをくれた。時には小論文の形式で教えてくれた」と体験できたことに衝撃を受けた方も多いでしょう。たった1年の間に生成AIそのものも急速に進歩して答えの内容も洗練され、ビジネスだけでなく行政や政治の場でも活用が検討されているようです。


一方で「新しい資本主義」を上手く泳ぐために求められる新しい価値の創造を生成AIで行うことはできるか?生成AIがインターネット上の情報をもとに回答していることを鑑みると、それは難しいと考えられます(一方で、インターネット上では情報提供されているが『わが街にはその概念はない。誰もそれを知らない』という場合には、その街限定のイノベーションを生むことはできるかも知れません)。では、新しい価値を創造しようとする際に生成AIは全く使えないのか?必ずしも、そうではないと思われます。今回はその点を考えていきます。



生成AIに案を検討してもらい新たな価値を探る

既にある情報を加工して提供してくれる生成AIを用いてどのように新しい価値を創造できるか?「生成AIに自分の案を提示して陳腐なものを除外、結果的に残る新たな価値を探る」アプローチが考えられます。


新しいビジネスや商品等の検討として自分が考えついた案について生成AIに説明を求め、詳細かつ的確な(もちろん事実や法則等に即した正確性を完全に備えている訳ではないだろうが、自分が想定している内容をほぼ捉えている、時には自分が考えを超えた内容まで盛り込まれている)情報を提供したなら「それは新しい価値とは言えないかもしれない」と考えられます。ブラッシュアップするか、もっと他の案を探した方が良いのかもしれません。一方で生成AIからはあまり情報が得られないなら、自分の案が新しい価値である可能性があると考えられます。


インターネットでは莫大な情報がありますが、このような使い方は生成AIが登場するまで難しかったと感じています。検索だとキーワードを知らないと的確に情報が得られないからです。生成AIの登場で、インターネット活用の幅が一挙に広がったと言えるでしょう。



生成AIとの打ち合いで自ら新しい価値を生み出す

「案そのものがない場合には使えないのだろうか?」案がない場合は工夫が必要と考えられます。


生成AIはインターネット上に現存する情報をもとに、与えられた質問・依頼に対応する答えを提示します。「今まで誰も考えたことがなかった用途に使える道具はないか」と質問しても、生成AIは「今まで誰かが考え、実現し、インターネット上にアップした報告」をもとに答えを作成します。ストレートに質問したのでは欲しい答えは得られません。というより生成AIに従来なかった新しい価値を発想させることは今のところ(今後も、かもしれませんが)不可能と考えられます。


但し人間と協業して新しい価値を生める可能性はあるでしょう。生成AIに手伝ってもらいながら自分自身が新しい価値を生むのです。


既存の情報を掛け合わせることは、生成AIは得意としています。例えば自社製品が主に企業で用いられる場合に、家庭ではどのように利用可能かを質問すると「それらしい」返答があります。最初は自分でも思いつく用途を提案するかもしれませんが、生成AIとのやり取りを重ね、条件を付けるなどして方向性を変えながら質問をすると「殻を破った答え」を返す可能性もあります。生成AIはインターネット上の情報をもとに回答を作成しますが、人間ほど言葉を正確に把握できない「機械」だから生じる誤解に基づいて、人間には思い付かないユニークな答えを出す可能性があるのです。


また、生成AIに質問を投げかけてもらうというアプローチも考えられます。「新しい価値を生むきっかけ作りのため、どんな質問が考えられますか?」という直球の質問だけでなく「稀代の大発明家は自分にどんな質問を投げかけて○○(具体名)を発明したと考えられますか」と聞けるかもしれません。○○に他の商品(あるいは架空の商品)を入れると、質問が多彩になる可能性もあります。様々に工夫して質問を引き出し、自分で考え答えを出すことで、新たな発想を生むのです。


生成AIは特定の仕事を消失させる一方で、新たな仕事を生み出し、今までにないアシスタントにもなると予想されます。被害を受けるか恩恵に与るかの差は、結局は人間の「情報引っ張り力」によることになるでしょう。生成AIの活用法を磨き上げ今までにない価値を生み出して、新しい資本主義を生き抜くパワーを獲得しましょう。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は写真ACから YKwork さんご提供によるものです。YKwork さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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