Catch the Future<未掴>!

第35回

高付加価値化へのイノベーション

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



令和6年能登半島地震や羽田空港の日航機・自衛隊機事故など不安な雰囲気の中で2024年が幕を開けました。ウクライナ・ロシア戦争やガザ地区での戦闘なども予断を許しません。不安要素が渦巻く中で我が道をしっかりと切り拓いていくためには何が必要か?自分たちの中に力強いポジティブ要素を育てていくことが決め手になると思います。前回、2024年には高い付加価値を実現していくと誓って努力することがポイントとなるというお話をしました。今回はそれを実現するイノベーションについて考えていきます。



既存を活用して新しい価値を生むアプローチ

前回、高付加価値化を実現するアプローチについて考えました。超最先端技術を獲得して産業化するアプローチと、今ある技術を活用して今までなかった利便性を実現するアプローチの2つがあるとするなら、日本は前者、欧米や中国は後者に重きを置いているように感じられます。


「日本も今ある技術を活用して今までない利便性を実現するアプローチを採っていない訳ではないのだが。」仰る通りで、後者のアプローチがない(ゼロだ)と主張する訳ではありません。ただ前者と後者の両方が選択肢としてある中で、企業にせよ政府にせよ、前者の「超最先端技術を獲得して産業化する」ことをメインに考えているとの印象を強く持ちます。後者のアプローチに力を入れているとの印象は、あまり持っていません。


前回、既に存在する技術を活用して今までにない利便性を実現する例としてApple社のiPhoneを挙げました。このようなイノベーションが日本には少ないと感じています。「日本でもAndoroid携帯を生産している会社は沢山あるが。」それは既にスマートフォンという商品カテゴリがあり、プラットフォームとしてAndoroidがある中で、それらを活用した製品を提供するという意味合いです。


ここで提案しているのは商品カテゴリもプラットフォームもない分野で、それらを新しく開発し、今までにないサービスを提供したいという意味です。例えばドイツではIoTを開発しました。モノにセンサを載せてインターネットを活用して管理・利用するイノベーションです。インターネットやセンサは熟した技術でしたが「モノに搭載して新しい価値を実現する」との狙いが世界を席巻しました。そのようなイノベーションを期待しています。



センサを活用した新しい価値の例

例えば「センサを搭載して管理する」という概念だけでも、無限の広がりがあります。1月2日の羽田空港における日航機・海保機事故は、両方の飛行機にセンサを搭載・活用すれば回避できたかも知れません。「空を飛ぶ飛行機の安全性を高める」という概念のもと航空管制やナビゲーション等は高度に発展しましたが、地面の走行中については配慮が足りなかったのか、あの悲惨な事故を防ぐことができませんでした。


一方で数多くのセンサを利用して狭い倉庫内でも衝突などを避けながら台車を効率的に自動運行するシステムはもう実用化しています。この技術を応用したら、あの事故は防げたのではないかと思われます。滑走路にもセンサを設置すれば、その精度はもっと高められるでしょう。


飛行機が地上で衝突等する事故を避けるためのシステムを開発するため、まだ実現されていない素材や電子部品、システム言語や技術等の開発を待つ必要はないでしょう(これらが開発されると信頼性等をより高めることが可能になるとは思われますが)。


必要なのは「あのような悲惨な事故は絶対に二度と起こしたくない(今まで実現し得なかった新しい価値の実現)」という強い想いを持ち、それを実現するシステムを考え実現すると共に、それが機能し普及する社会的な仕組みまでも考えていくことです。


前者よりも後者の方が困難かもしれません。特に古いビジネス習慣が根強く残り、既得権益の維持を目的とした(既存参加者を対象に利害調整を目的とすると、新参者にとっては既得権益の確保と映る)取引・行政法制(例:岩盤規制)等の変革が難しい日本では、この面での障害克服がポイントとなるでしょう。


しかし今、これらの障害に打ち勝って技術的にも社会的にも価値の高いイノベーションの実現が求められています。日本では、イノベーションというと技術的側面に思考が止まってしまう傾向があると感じられますが、「社会を変えていこう、人々の生き方をもっと良いものにしていこう」と社会的側面にまで想いを寄せていくことがポイントになるのです。


大きなパラダイムシフトになりますが、先ほど挙げたようにApple社のiPhoneやドイツのIoTなどの例もありますから、日本にできない理由はありません。2024年はぜひ、このような価値の高いイノベーションを目指して行きたいと思います。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




冒頭の写真は写真ACから こぬぬこ さんご提供によるものです。こぬぬこ さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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