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第31回

価値を付け足していく方法

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



新しい資本主義では「付加価値付け」により、これまでよりはるかに高い価格で買ってもらえる可能性が高まります。ある商品を開発した時に「良いモノができた。欲しがる人が多いだろう」と考えて売り出すのと、「これにどんな価値を付け加えると、より高い価格で買ってもらえるか」まで考えて工夫してから売り出すのでは、売上高や利益が格段に違ってきます。筆者は、アメリカがGDPの高い成長率を実現しているのは、この「付加価値付け」に長けているからだと考えています。今回は、価値をどんどんと付け足していく方法について考えます。



利便性で価値を付け足す

付加価値付けの方法として、これまでも触れたように利便性の実現があります。例えば「今までできなかったことができる」他、「今までできたことが容易にできる」、「今まで自らがコントロール等して実現できたことを自動で実現できる」などのアプローチがあります。例えばドローンは「空中を浮遊する物体を利用する」という、ほとんどの人に開かれていなかった利便性を提供しました。最初は玩具のように見なされましたが、今では「高所のトラブル等を察知する」ために土木・メンテナンス業者が重宝するなど、あらゆる場所で使われています。


様々な機械・器具がIT化されインターネットに繋げられたことで、今までの作業が格段に容易になりました。バネ式体重計だと自らペンで紙に記録を取らなければなりませんでしたが、今やクラウド機能を持った体重計を使えばスマホに記録が残ると共にBMIなども自動計算され、体調管理に役立っています。


IT化とインターネット連携の掛け算により、今までは考えられなかった自動化が可能になりました。書籍類をはじめとして家電品、食料品など膨大な物品を、インターネットで注文があれば最短期日で届けるAmazonの配送センターには「走る棚」が使われているそうです。注文された在庫品を持った棚がピックアップ場所に集合するのです。これにより多種多様な在庫品を手に入れるため広大な配送所内を走り回る、あるいは在庫品を自動的にピックアップする大規模な設備が不要になるという利便性が実現しました。これにより浮いたコストは、時短効果も併せて、莫大な金額になると想像されます。



意義で価値を付け足す

価値を付け足す方法としてもう一つ、今までなかった「意義」を提供するアプローチがあります。前回、地球環境に優しいという意義が認められたハイブリッド車を例に挙げました。自動車が初めて世に出た当初は「馬不要の馬車」という価値でしたが、「馬車では不可能な重量物を運べる、高速で移動できる、長時間稼働できる」などに価値が変化、更には安全性や運動性能、心地よさ、ドライビングの楽しさ、所有欲を満たすなどが加わりました。2000年頃に認められた「地球に優しい」は、自動車の価値に新たな軸を与えたと感じています。最近では自動運転の優秀さが価値を左右しています。


また例えば食品について「体に害のある成分が一切入っていない」、あるいは服飾品について「製造過程で子供や低所得者から搾取していない。逆に手厚く分配して当該層あるいは先進途上国の発展に寄与している」という意義も認められてきています。



ブランドや株価・リーダーシップで価値を付け足す

利便性や意義の強調等で価値を付け足しに成功、高めの価格で自社商品を販売する(経済学的意味での付加価値増大に成功している)企業の中には、自社の価値を高めて相乗効果を生んでいる企業があります。


その第1はブランドの活用です。消費者・市場で利便性や意義が認められている商品(あるいは自社そのもの)をブランド化して「○○ブランドは地球に優しい(体に良い、社会的に善良である…)」というイメージを植え付けることで、更に自社商品の価格を高めることに成功しています。


そして更に上の境地に至る企業もあると指摘しておきましょう。商品の利便性や意義の強化、そして自社のブランド化に成功した企業は株価が高くなり、業界内でリーダー的存在になり得ます。大量生産・大量消費の時代は価格を抑えて競合からシェアを奪い市場・顧客を独占・寡占した企業がリーダーと認められていましたが、新しい資本主義では必ずしも独占・寡占企業である必要はありません。シェアが大きくとも儲けておらず、株価が低迷している企業よりも、他企業が提示できない高価格を提示して受け入れてもらっている企業がリーダーとして認められます。


「付加価値付け」の総力戦に勝つ企業がリーダーシップを握り、他企業には成し得ない多重に及ぶ価値を付け足していき、更に強くなっていくのです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


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なお、冒頭の写真は写真ACから 月舟 さんご提供によるものです。月舟 さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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