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第6回

中小企業5.0

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 政府発表の “Society5.0”によると、社会は今までと全く違ったものへと変化していきます。この実現により企業や政府の役割も変わって来ると予想されることは“Society5.0”の中でも触れられている通りです。であるならば、当然、中小企業の役割も変わって来ることでしょう。さもなくば、中小企業そのものが「時代遅れの産物」になってしまうと考えられます。実際、中小企業の役割はこれまで「中小企業の役割1.0」から「中小企業の役割4.0」へと変遷し、今や「中小企業の役割5.0」時代に突入しようとしていると考えられます。



中小企業の役割1.0

<唯一無二の経済主体としての役割>

 人類が自給自足から脱して経済活動を行うようになって以来、家内制手工業の時代までは、中小企業こそが経済活動の中心でした。法人という概念が生まれる前から、中小企業は、農耕・狩猟従事者だけではなし得ないパフォーマンスを生むサポートを行う第3のパートとして生まれ、その提供として交換(経済活動)を推進することで社会の高度化に貢献したのです。社会が豊かになるインフラとして、中小企業は太古から活躍してきたといっても過言ではありません。



中小企業の役割2.0

<大企業と主人公の座を争う経済主体としての役割>

 産業革命により動力を使って大規模な生産活動を行う大企業が生まれて以来しばらくの間、中小企業は、経済における主人公としての座を新たに勃興した大企業と激しく争っていました。この一つの現れは「ラッダイト(打毀し)運動」に代表される排斥運動です。一方でこの時代は、大量生産以外の切り口で対抗する中小企業が台頭し、本領を発揮した時代でもあります。ここで中心的な役割を果たした中小企業は、製品・サービスの機能や品質を飛躍的に向上させたり、それが実現できる製造方法等を格段にブラッシュアップする点で牽引役となっていました。



中小企業の役割3.0

<大企業へのサポーターの役割>

 「中小企業の役割2.0」時代の大企業との争いは、「大企業が生産する安価な製品への大衆による支持」や「当時頻繁に起こっていた戦争への対応要請」などの理由で、大企業の勝利に終わりました。戦後日本における経済復興の場面で中小企業振興ではなく大企業振興を軸とした「傾斜生産方式」が採択されたのも、その一つの現れと言えるでしょう。この趨勢の中で中小企業は「大企業のサポーター」という役割に追いやられていきました。自動車や電機など重厚長大産業における下請け体制はその典型例と言えるでしょう。



中小企業の役割4.0 

<ニッチ補填の役割>

 経済活動において大企業が主役的役割を果たすようになったとはいえ、人々が求める全ての需要を大企業が供給できるわけではありません。「需要量の希少性などの事情から生産体制やコストなどの制約が働き大企業活動としては対応できない需要(ニッチ市場の需要)」が存在し、その供給主体として中小企業は必要不可欠な存在として活躍しました。人が、大企業が提供する製品やサービスだけでは生活することも、それを十分に楽しむこともできないことを鑑みると、中小企業はいつも重要な役割を担っていたと解釈できます。



中小企業の役割5.0 

<大企業と人を繋ぎ真の満足・幸福を実現する役割>

 大企業は”Society4.0”ではITやその他資源を活用して自社製品・サービスを顧客に売り込むことを主な戦略としていました。このため事実上、中小企業と競争していたのです。デザイン家具販売で知られるノキアは、その一例と言えるでしょう。


 IT自働化の時代である”Society5.0”では様相が変わってきます。ITを活用して「我が社の製品・サービスを顧客に受け入れられるものにリバイスして欲しい」と依頼すれば、それに対応してくれる中小企業が存在することに気付き、それを積極的に活用するようになります。そこから一歩進んで、中小企業が活躍するプラットフォームを提供する役回りに徹する大企業も現れます。中古書籍販売等の窓口となるAmazonも、その一つと言えるでしょう。


 このような環境下、中小企業の役割は変化しています。IT自働化の枠組みの中で大企業の資源を巧みに使いながら、巨大化した大企業では対応できなくなった、人々の多様で繊細な需要に応える役割を果たすのです。中小企業が前面に出て人々と相対することによって、人々の満足・幸福が実現できるようになります。 




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。


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プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた。総合研究所では先進的取組から地道な取組まで様ざまな中小企業を研究した。一方で日本経済を中小企業・大企業そして金融機関、行政などによる相互作用の産物であり、それが環境として中小企業・大企業、金融機関、行政などに影響を与えるエコシステムとして捉え、失われた10年・20年・30年の突破口とする研究を続けてきた。

独立後は中小企業を支える専門家としての一面の他、日本企業をモデルにアメリカで開発されたMCS(マネジメント・コントロール・システム論)をもとにしたマネジメント研修を、大企業も含めた企業向けに実施している。またイノベーションを量産する手法として「イノベーション創造式®」及び「イノベーション創造マップ®」をベースとした研修も実施中。

現在は、中小企業によるイノベーション創造と地域金融機関のコラボレーション形成について研究・支援態勢の形成を目指している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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