Catch the Future<未掴>!

第36回

イノベーションは思考法で実現する?!

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

令和6年を飛躍の年にする、いや飛躍が継続する年々のスタートにするためにはイノベーションがポイントとなるとお話しているところです。量子コンピューターの実用化や全く新しいエネルギー源の開発等、基礎研究から花開かせる「ビッグなイノベーション」も大切ですが、既存を活用して新しい価値を生むイノベーションを生むこと、敢えて言えば量産と言えるレベルで生めるようになることがポイントになると考えられます。今回は、この点について深堀して考えていきます。


既存を活用すれば悲惨な事故は回避できる?

前回、既に存在する技術を活用して今までにない利便性を実現した例としてIoT を挙げ、これを手本に「センサを活用して管理する」という概念を打ち立てると無限の広がりが生まれるとご説明しました。一つの応用として、1 月2日の羽田空港における日航機・海保庁機事故なども回避できるシステムが可能になるでしょう。テスラ社のEV には車体に多数のセンサが内蔵されており、周囲の物体を自動車や人、バイクなどと認識してディスプレイ上に表示します。飛行場でも物体を種類別に認識・表示するシステムを構築すれば安全運航が可能になりそうです。

「それは無理だろう。海保庁機は離陸せずに地面にいたが、日航機は空から時速数百キロメートルという高速で接近していた。テスラと同様の情報が得られても事故は回避できない。」確かにその通りです。ではセンサを機体ではなく滑走路に仕込んで、情報を各機に生データとして提供するのではなく、管制塔内の巨大なディスプレイに表示(滑走路やその周辺の状況を、大きさや熱量・挙動などから飛行機や飛行場で働く車両なのか、その他の未確認人工物か、あるいは動物なのかを判断して表示)することとし、それを見て管制官が各機に指示を出すことにしたら、上手く機能できそうです。着陸しようとする飛行機が〇分(〇kmkm)以内に迫っている場合にはアラーム音で知らせる、あるいは着陸を中止するようパイロットに指示するシステムとすることも考えられます。

このように考えると1 月2日の事故を二度と起こさないようにするのは「無理」ではなく、起こさない策やシステムの必要性を認識して実現する工夫や熱意を発揮する、いわば執念さの問題ではないかと感じられます。


既存を活用できる「思考法」が求められている?

1月2日に発生した航空機地上事故を起こさない(確率論的に6シグマ(百万回に3〜4回)の発生率)対策を講じることは、今の時代「極端に困難、現実化は絵空事」と表現するような課題ではないでしょう。筆者としては、自動車の自動運転レベル3「条件付運転自動化(限定された条件下なら全ての運転操作をシステムが実施する。但しシステムによる運転中でも運転手はシステムから要請があれば運転できる状態にある必要がある)」の実用化(世界上の道路で可能とする)と比べれば、容易な部類と言えるのではないかと考えています。

ではなぜこれが今まで実現しなかったのか?「必要性と工夫、そして熱意の問題」ではないかと感じています。必要性の問題とは、回避すべきとの認識に至る重篤な事態が発生しなかった、つまり入口の障害で、今までは感じられなかったかもしれませんが、今回の事故で必要性を感じられるようになったと考えられます。熱意の問題とは、何か案が出て実現化に向けて進む過程で必ず出る反対論に立ち向かって自らの理想を実現しようとするエネルギーが不足する、いわば出口での障害です。今回の事故で回避の必要性が認識されると、次の「工夫」がポイントになります。これが日本の課題となっています。

先ほど、1 月2日の航空機事故を起こさない対策は自動運転レベル3より容易ではないかとの意見を申しました。しかしこれは「簡単な課題だ」と主張する意味ではありません。非常に困難な思考課題だと考えられます。センサなどの部品レベルを突き詰めていく専門的な思考と、感知した情報を処理して映像化したりアラーム信号の発出等に繋げるシステム思考を融合させる必要があります。そのシステムを活用して人間が適切に判断できるようにする考慮も必要でしょう。開発しようとするシステムだけでなく人間など外部システムをも包含するシステム思考が必要になると考えられます。

今、日本が活性化する方策の一例として「航空機が飛行場で安全に運航できるシステム」の開発を考えてみました。それを実現するには非常にレベルの高い思考能力が求められます。このように考えると、日本の活性化には「思考能力レベルのより一層の向上」が必要であると、理解できるでしょう。


本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、未来を掴んでみてください。



 

プロフィール

中小企業診断士事務所 StrateCutions 代表
合同会社StrateCutions HRD 代表社員
落藤 伸夫

早稲田大学政治経済学部卒(1985 年)
Bond-BBT MBA 課程修了(2008 年)
中小企業診断士登録(1999 年)
1985 年 中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
2014 年 日本政策金融公庫退職
2015 年 中小企業診断士事務所StrateCutions 開設
2018 年 合同会社StrateCutions HRD 設立


Webサイト:StrateCutions

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