第12回
その他大勢の「抽象企業」から脱却する方法
一般社団法人パーソナル雇用普及協会 萩原 京二
ある就活支援企業が行ったアンケートによれば、企業研究を行ううえで知りたい情報のトップ5は次の通りでした。
1位:実際の仕事内容
2位:社風
3位:給与水準・平均年収
4位:他社と比べた強み・弱み
5位:求める人材像
採用活動にもマーケティング的な発想が必要であることは今さら言うまでもないことですが、やはりターゲットとなる人たちが必要としているものを発信しなければ、優秀な人材を確保することは難しいのです。
では、具体的にどのようにすればよいのかというと、その他大勢の「抽象企業」から脱却するために、次の4つの視点からのメッセージを「具体的」に発信するのです。
・会社の魅力
・仕事の魅力
・職場の魅力
・待遇の魅力
この4つのメッセージをターゲット、つまり「求める人材」に響くよう的確に発信しましょう。 これが、私たちが提唱している「集めない採用」の第一歩です。大勢の母数が集まらなくても、ピンポイントで届けたい人にメッセージを届けられれば、良い人材が確保できるのです。
●具体的なメッセージの内容
まず「会社の魅力」は、社歴の長さはもちろん、何か特別な技術を持っていれば、必ず発信しましょう。社長がユニークなキャラクターであれば、発信しても差し支えありません。昨今はSNSで、社長にファンをつける投稿も多く見られますね。
2つ目の「仕事内容の魅力」は、その仕事を通じて自らが成長できるか、社会に貢献できるのか、といったことです。 昨今はSDGs(持続可能な開発目標)に関心の高い若い人も多いので、どのような形で世の中へ貢献できる仕事なのかは重要でしょう。
3つ目の「職場の魅力」は、人間関係のよさや活気の有無です。「なんか、楽しそう」と思ってもらえれば、応募の確率は上がります。ただ、最近は採用のコンサルタントが社長と社員、社員同士の仲のよさをSNSで発信するようアドバイスし、それだけしか発信していないとすれば不十分です。いざ入社したら、じつはブラックだった…となれば、早々に離職することは目に見えています。
実は、4つ目の「待遇の魅力」、つまり労働条件(給与や手当、労働時間、休日・休暇など)に関しては、一般的な採用コンサルタントではなかなか具体的なアドバイスが難しいケースが多いと思います。特に、就業規則の変更などが伴う場合には、専門家でなければタッチできない領域だからです。
●魅力的、かつ実態と合ったメッセージを発信しよう
4つのメッセージで大切なのは、「魅力的であること」はもちろんですが、それが「実態と合っていること」も非常に重要です。会社のあり方が、外に見せているものと実際のものとにギャップがあるようでは、長期雇用にはつながりません。 外面的によく見せても、メッキが剥がれて入れたそばから人がやめてしまえば、まったく意味がありませんね。それこそ、まさに「穴の開いたバケツに水を入れ続ける」ことになってしまいます。
プロフィール
一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二
1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。
Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会
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