第21回
人材の確保・定着に活用できる助成金その6
一般社団法人パーソナル雇用普及協会 萩原 京二
人材を定着させ戦力化を図るためには、従業員教育が不可欠です。また、働き方改革や世の中の変化に対応するための「リスキリング」は、日本だけでなく世界的にも推進されている動きとなっています。しかし、スキルアップに必要な教育や研修にはコストがかかります。また、教育をしている間は業務も止まるため、企業の売上にも影響を与えるでしょう。
そこで本日ご紹介するのが、助成金を活用した教育訓練の方法です。人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」を活用すれば、教育や研修にかかる企業のコストを削減しつつ、企業内にハイスキルな人材を輩出しやすくなります。
この助成金は、企業の持続的発展のため、新製品の製造や新サービスの提供等により新たな分野に展開する、またはデジタル・グリーンといった成長分野の技術を取り入れ
業務の効率化等を図るため、
・既存事業にとらわれず、新規事業の立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成
・業務の効率化や脱炭素化などに取り組むため、デジタル・グリーン化に対応した人材の育成
に取り組む事業主を対象に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を高率助成により支援する制度です。
「事業展開」とは、新たな製品を製造する、新たな商品やサービスを提供すること等により、新たな分野に進出することです。このほか、事業や業種の転換や、既存事業の中で製品の製造方法、商品やサービスの提供方法を変更する場合も事業展開にあります。
「デジタル・DX化」とは、デジタル技術を活用して、業務の効率化を図ることや、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革する等し、競争上の優位性を確立することです。
「グリーン・カーボンニュートラル化」とは、徹底した省エネ、再生可能エネルギーの活用等により、CO2等の温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることになります。
<支給対象となる訓練>
この助成金の対象となる訓練(教育)は、以下の要件を満たす必要があります。
(1)助成対象とならない時間を除いた訓練時間数が10時間以上であること
(2)OFF-JT(企業の事業活動と区別して行われる訓練)であること
(3)職務に関連した訓練であって以下のいずれかに該当する訓練であること
・企業において事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
・事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
<助成率および助成額>
助成率ならびに助成額は以下の通りとなっています。
・経費助成率:75%(中小企業の場合)
・賃金助成額:960円(1人1時間あがり)
・助成限度額:1億円(1事業所1事業年度あたり)
たとえば、訓練時間数が20時間で受講料が40万円の研修があったとします。この研修を受講させた場合には、以下の金額が支給されます。
・経費助成:300,000円(40万円×助成率75%)
・賃金助成:19,200円(960円×20時間)
・合計:319,200円
つまり、40万円の研修を実質80,800円で受講できることになります。ほぼ80%オフになる計算です。上記の通り、かなり高額な助成率(助成額)となっていますので、ぜひ本助成金を積極的に活用して、DX化人材の育成に取り組んでいただきたいと思います。
なお、DX化のための設備(システムやソフトなど)を導入する場合には、「業務改善助成金」や「IT導入補助金」なども活用できますので、そちらもご検討をいただければと思います。
プロフィール
一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二
1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。
Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会
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