第50回
令和7年度予算概算要求:中小企業経営者が注目すべき重要ポイントと支援策
一般社団法人パーソナル雇用普及協会 萩原 京二
8月30日に厚生労働省の令和7年度予算概算要求が発表されました。この予算概算要求には、私たち中小企業にとって重要な取り組みや支援策が数多く含まれています。今回は、その中から特に注目すべきポイントを取り上げ、中小企業が今後取り組むべき課題と、それを支援するための助成金制度についてご紹介します。
1. 予算概算要求の重要ポイント
まず、令和7年度の予算概算要求で強調されているのは、「持続可能な社会保障の実現」と「労働市場改革」の推進です。この二つのテーマは、日本経済全体の成長を支える基盤を強化するものであり、中小企業にとっても直接的な影響があります。
(1)持続可能な社会保障の実現:
少子高齢化が進む中、全世代が安心して生活できる社会保障制度の構築が求められています。特に医療や介護の分野では、質の高いサービスの提供を維持しつつ、効率的な運営を目指す動きが進んでいます。
(2)労働市場改革の推進:
賃金引き上げや、多様な働き方の推進、リスキリング(再教育)を通じて、労働市場を活性化させる取り組みが強化されています。これにより、企業の生産性向上や労働者のキャリアアップが期待されています。
2. 中小企業が取り組むべき課題
これらの政策の中で、中小企業として特に取り組むべき課題は以下の二つです。
(1)賃上げと生産性向上:
賃金引き上げは、企業の経営コストを圧迫する一方で、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保に繋がります。中小企業は、限られたリソースでいかに賃上げを実現し、生産性を向上させるかが重要です。
(2)多様な人材の活用と働き方改革:
高齢者や障害者、子育て世代など多様な人材を活用することで、企業は新しい視点やスキルを取り入れることができます。また、テレワークやフレックスタイム制の導入など、柔軟な働き方を推進することで、従業員が働きやすい環境を提供する必要があります。
3. 中小企業を支援する助成金制度
これらの課題に取り組むために、中小企業が活用できる助成金制度がいくつかあります。ここでは、特に有効なものをいくつか紹介します。
(1)業務改善助成金:
賃金引き上げを行う中小企業に対して、業務の効率化を図るための設備投資や、人材育成にかかる費用を助成する制度です。この助成金を活用することで、賃上げによるコスト増加を緩和しながら、生産性向上のための投資を行うことができます。
(2)キャリアアップ助成金:
非正規社員を正社員に転換したり、従業員のスキルアップを図る企業に支給される助成金です。例えば、契約社員やパートタイム社員を正社員化する際の訓練費用などが助成されます。これにより、企業は人材の定着を図りつつ、組織全体のスキルアップを促進できます。
(3)働き方改革推進支援助成金:
テレワークの導入や労働時間の短縮など、働き方改革に取り組む企業に対して支援を行う制度です。テレワークの導入に必要な機器の購入費や、働き方改革に伴う設備変更費用の一部が助成されるため、企業は新しい働き方を導入しやすくなります。
(4)人材開発支援助成金:
従業員の職業訓練や再教育に対して助成を行う制度です。デジタル技術の習得や、新たな事業分野への進出を目指す企業にとって非常に有効で、従業員のスキルアップを促進し、企業の競争力を高めることができます。
(5)両立支援助成金:
育児や介護と仕事を両立できるような制度を導入した企業に対する助成金です。育児休業制度の導入や、介護休業を取得しやすい環境を整えるための支援が受けられます。これにより、従業員が安心して働き続けられる環境を整備し、企業の人材定着率を向上させることができます。
4. まとめ
令和7年度の予算概算要求では、中小企業にとって多くのチャンスが提供されています。賃上げや働き方改革、多様な人材の活用など、さまざまな課題に取り組むことで、企業は持続的な成長を遂げることができます。これらの支援策を積極的に活用し、経営の改善や事業の拡大に役立ててください。
具体的な助成金の詳細や申請方法については、厚生労働省のウェブサイトや地域の商工会議所にお問い合わせいただき、最新の情報を確認することをお勧めします。支援策を上手に活用し、共により良い未来を築いていきましょう!
プロフィール
一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二
1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。
Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会
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