第15回
リモートワークと採用戦略の進化
一般社団法人パーソナル雇用普及協会 萩原 京二
リモートワークの普及は、働き方のパラダイムを根本から変えつつあります。これは単に「どこで働くか」の問題に留まらず、企業がどのようにして優秀な人材を獲得し、維持するかについても大きな変革をもたらしています。特に、パーソナル雇用制度の導入は、リモートワークの普及と相まって、採用戦略の新たな地平を開いています。
リモートワークは地理的な制約をなくし、企業は従来よりも広範囲から候補者を選ぶことができるようになりました。これにより、才能のプールが大幅に拡大し、より多様なバックグラウンドを持つ人材の採用が可能となっています。しかし、この新たな環境は、従来の採用方法や労働契約の構造にも変更を迫っています。ここで、パーソナル雇用制度が重要な役割を果たすことになります。
パーソナル雇用制度は、個々の従業員のニーズに合わせた柔軟な働き方を可能にする制度です。この制度のもとでは、従業員は自分のライフスタイルやキャリアの目標に応じて、働き方を自由に選択できます。例えば、フルタイムからパートタイムへの転換、リモートワークの導入、さらにはプロジェクトベースでの雇用など、多様な働き方が実現可能になります。
このような柔軟性は、リモートワークと相まって、特に新しい世代の労働者にとって魅力的です。彼ら(いわゆるZ世代)は、仕事と私生活のバランスや個人的な成長に大きな価値を置きます。パーソナル雇用制度は、このようなニーズに応えることができ、従業員の満足度とエンゲージメントを高めることができます。
さらに、この制度は企業にとっても大きなメリットをもたらします。柔軟な働き方を提供することで、優秀な人材を引きつけ、長期間にわたって留めることが可能になります。また、プロジェクトごとに最適なチームを編成することで、効率的な運営と高い生産性を実現できます。
しかし、このような柔軟性の高い働き方を実現するためには、企業文化や管理システムの再考も必要です。リモートワークやパーソナル雇用制度の成功は、従業員が自律し、責任を持って働くことを基本とします。したがって、企業は従業員を信頼し、支援する文化を築く必要があります。
加えて、この新しい働き方は、パフォーマンスの評価方法にも影響を及ぼします。従来の時間ベースの評価から、成果や目標達成に基づく評価へのシフトが求められます。これには、明確な目標設定と透明なコミュニケーションが不可欠です。
結論として、リモートワークとパーソナル雇用制度の普及は、企業が人材を獲得し、維持する方法に革命をもたらしています。この新たな働き方は、従業員にとっても企業にとっても多くのメリットをもたらしますが、その成功は企業文化、管理システム、そして労働者との信頼関係の構築に大きく依存しています。今後、これらの要素をどのように統合し、活用していくかが、企業の持続可能な成長の鍵を握るでしょう。
プロフィール
一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二
1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。
Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会
- 第61回 大企業でも導入が進む「パーソナル雇用制度」
- 第60回 最低賃金1500円時代における給与の決め方
- 第59回 顧客からの理不尽な要求にどう対応するか~カスタマーハラスメントの現状と対策(その3)
- 第58回 顧客からの理不尽な要求にどう対応するか~カスタマーハラスメントの現状と対策(その2)
- 第57回 顧客からの理不尽な要求にどう対応するか~カスタマーハラスメントの現状と対策
- 第56回 中小企業が注目すべきミドル世代の賃金上昇と転職動向~経験豊富な人材の採用でビジネス成長を加速
- 第55回 中小企業が賃金制度を考えるときに知っておきたい基本ポイント
- 第54回 2024年10月からの社会保険適用拡大、対応はお済みですか?
- 第53回 企業と競業避止契約の今後を考える
- 第52回 令和7年度 賃上げ支援助成金パッケージ:企業の成長と持続的な労働環境改善に向けて
- 第51回 解雇の金銭解決制度とその可能性 〜自民党総裁選における重要テーマ〜
- 第50回 令和7年度予算概算要求:中小企業経営者が注目すべき重要ポイントと支援策
- 第49回 給与のデジタル払いの導入とその背景
- 第48回 最低賃金改定にあたって注意すべきこと
- 第47回 最低賃金50円アップ時代に中小企業がやるべきこと
- 第46回 本当は怖い労働基準監督署の調査その4
- 第45回 本当は怖い労働基準監督署の調査(その3)
- 第44回 本当は怖い労働基準監督署の調査 その2
- 第43回 本当は怖い労働基準監督署の調査
- 第42回 初任給横並びをやめたパナソニックHD子会社の狙い
- 第41回 高齢化社会と労働力不足への対応:エイジフレンドリー補助金の活用
- 第40回 助成金を活用して人事評価制度を整備する方法
- 第39回 採用定着戦略サミット2024を終えて
- 第38回 2025年の年金制度改革が中小企業の経営に与える影響
- 第37回 クリエイティブな働き方の落とし穴:裁量労働制を徹底解説
- 第36回 昭和世代のオジサンとZ世代の若者
- 第35回 時代に合わせた雇用制度の見直し: 転勤と定年の新基準
- 第34回 合意なき配置転換は「違法」:最高裁が問い直す労働契約の本質
- 第33回 経営課題は「現在」「3 年後」「5 年後」のすべてで「人材の強化」が最多
- 第32回 退職代行サービスの増加と入社後すぐ辞める若手社員への対応
- 第31回 中小企業の新たな人材活用戦略:フリーランスの活用と法律対応
- 第30回 「ホワイト」から「プラチナ」へ:働き方改革の未来像
- 第29回 初任給高騰時代に企業が目指すべき人材投資戦略
- 第28回 心理的安全性の力:優秀な人材を定着させる中小企業の秘訣
- 第27回 賃上げラッシュに中小企業はどのように対応すべきか?
- 第26回 若者の間で「あえて非正規」が拡大。その解決策は?
- 第25回 「年収の壁」支援強化パッケージって何?
- 第24回 4月からの法改正によって労務管理はどう変わる?
- 第23回 4月からの法改正によって募集・採用はどう変わる?
- 第22回 人材の確保・定着に活用できる助成金その7
- 第21回 人材の確保・定着に活用できる助成金その6
- 第20回 人材の確保・定着に活用できる助成金その5
- 第19回 人材の確保・定着に活用できる助成金その4
- 第18回 人材の確保・定着に活用できる助成金その3
- 第17回 人材の確保・定着に活用できる助成金その2
- 第16回 人材の確保・定着に活用できる助成金その1
- 第15回 リモートワークと採用戦略の進化
- 第14回 「社員」の概念再考 - 人材シェアの新時代
- 第13回 企業と労働市場の変化の中で
- 第12回 その他大勢の「抽象企業」から脱却する方法
- 第11回 Z世代から選ばれる会社だけが生き残る
- 第10回 9割の中小企業が知らない「すごいハローワーク採用」のやり方(後編)
- 第9回 9割の中小企業が知らない「すごいハローワーク採用」のやり方(前編)
- 第8回 中小企業のための「集めない採用」~ まだ穴のあいたバケツに水を入れ続けますか?
- 第7回 そもそも「正社員」って何ですか? - 新たな雇用形態を模索する時代へ
- 第6回 成功事例から学ぶ!パーソナル雇用制度を導入した企業の変革と成果
- 第5回 大手企業でも「パーソナル雇用制度」導入の流れ?
- 第4回 中小企業の採用は「働きやすさ」で勝負する時代
- 第3回 プロ野球選手の年俸更改を参考にしたパーソナル雇用制度
- 第2回 パーソナル雇用制度とは? 未来を切り開く働き方の提案
- 第1回 「労働供給制約社会」がやってくる!