第20回
人材の確保・定着に活用できる助成金その5
一般社団法人パーソナル雇用普及協会 萩原 京二
本コラムではこれまで、雇用関連の助成金の概要と助成金を活用した具体的な人材戦略の構築方法として、「キャリアアップ助成金」や「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用助成金」の活用方法についてご紹介をして参りました。本日は、「両立支援等助成金」について解説をします。
<制度の概要>
働き続けながら子育てや介護を行う労働者の雇用の継続を図るための就業環境整備に取り組む事業主に対して、職業生活と家庭生活の両立支援に対する事業主等の取組を促進し、労働者の雇用の安定を図ることを目的とした助成金です。
<3つのコース>
1. 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境の整備措置の実施等を行い、実際に男性従業員に育児休業を取得させた場合、第1種の助成対象となります。また、その後3年以内に30%以上上昇させた場合には、第2種の適用があります。
【助成金額】
・第1種:育児休業取得 20万円など
・第2種:1年以内の育児休業取得率の30%以上上昇達成 60万円など
2.育児休業等支援コース
育児休業の円滑な取得・職場復帰のための取組を行った事業主が助成の対象です。具体的には、「育休取得」「対象労働者の職場復帰」「業務代替支援」「職場復帰後支援」「新型コロナウイルス感染症対応特例」の5つの取組や支援が対象です。
【助成金額】
・育休取得:30万円
・職場復帰:30万円
・業務代替支援:最大50万円
・職場復帰後支援:制度導入 30万円など
・新型コロナウイルス感染症対応特例:1人あたり10万円(上限100万円)
3.介護離職防止支援コース
「介護支援プラン」を策定して介護休業の取得・復帰に取り組んだり、介護のための柔軟な就労形態の制度を導入して実際に利用者が生じたりした中小企業事業主が助成されます。
具体的には、以下の3つの取組が対象です。
(1)介護休業
対象労働者が介護休業を合計5日以上取得し、復帰した場合
(2)介護両立支援制度
介護のための柔軟な就労形態の制度を導入し、合計20日以上利用した場合
(3)新型コロナウイルス感染症対応特例
新型コロナウイルス感染症への対応として、家族を介護するために特別休暇を取得した場合
【助成金額】
・介護休業:30万円
・介護両立支援制度:30万円
・新型コロナウイルス感染症対応特例:労働者1人あたり 最大35万円
<育休中等業務代替支援コースの新設>
令和6年1月から両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」が新設され、育児休業や育児短時間勤務を取得・利用する方の業務を代替する体制整備に対する支援が強化されました。
このコースでは、育児休業や育児短時間勤務期間中の業務体制整備のため、業務を代替する周囲の労働者への手当支給や、派遣の受入含む代替要員の新規雇用を実施した事業主に助成が行われます。1年度につき合計で10人まで、初回から5年間にわたって助成金の交付があります。対象となる取組と助成金額は、以下の3つです。
①育児休業中の手当支給
育児休業を取得した労働者が行っていた業務について、周囲の労働者に手当等を支払った上で代替させた場合に、支払った手当額に応じた額を支給します。最大125万円が交付されます。
②育児短時間勤務中の手当支給
育児短時間勤務を利用する労働者の代替の場合は、最大110万円が交付されます。
③育児休業中の新規雇用
育児休業を取得した労働者が行っていた業務を代替する労働者を新規に雇い入れた場合(新規派遣受入れも含む)に、業務を代替した期間に応じた額を支給するもので、最大67万5,000円が交付されます。
さらに、育休中等業務代替支援コースには、「プラチナくるみん認定事業主」である場合等の加算措置が設定されています。詳細につきましては、厚生労働省のホームページなど確認をして下さい。
なお、両立支援等助成金には上記コースの他、不妊治療と仕事との両立を支援する「不妊治療両立支援コース」もあります。
<まとめ>
両立支援等助成金は育児や介護のために従業員が休業した際、業務体制を整えたり、勤務を代替する者や新規雇用者への手当を支給したりする取組みを支援するものです。こうした支援を通じて企業の環境が整い、育児・介護休業(休暇)を取りやすい社会へとなることは、子育てや家族の介護が必要な従業員にとって大きなメリットがあります。多様な働き方を支えることは、多様な生き方を認めることです。助成金制度を活用し、予算的な負担を軽減しながら環境整備を進めることは、事業者にとっても大きな財産となります。助成金を上手に活用し、企業改革を進めていきましょう。
プロフィール
一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二
1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。
Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会
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