第16回
人材の確保・定着に活用できる助成金その1
一般社団法人パーソナル雇用普及協会 萩原 京二
日本の企業にとって人材の確保と定着は切実な課題であり、助成金制度はその有力なサポートツールとなっています。本コラムでは、多様な背景を持つ求職者の採用や正社員への転換、さらには高齢者の雇用を支援するさまざまな助成金に焦点を当てます。
雇用助成金とは、政府や自治体が企業に対し、雇用の創出や質の向上、特定の労働者層への雇用機会の提供を促進するために提供する経済的援助です。これには、新規雇用の創出、労働者のスキルアップ、高齢者や障害者など特定の労働者への就労機会の確保など、様々な形態があります。企業はこれらの助成金を活用することで、コスト負担を軽減しつつ、より多くの雇用を生み出し、また質の高い労働環境を整備することが可能になります。
【就職困難者の採用を支援する助成金】
特定求職者雇用開発助成金は、長期失業者や若年層、高齢者など、就職が困難とされる人々を対象に、彼らを雇用した企業に対して賃金の一部を補助します。障害者雇用に関する助成金も、障害者が抱える特有のニーズを考慮し、職場のバリアフリー化や必要な設備投資を支援することで、障害者の就労を促進します。これらは社会的な包摂を促し、多様な人材の活用を促進するためのものです。
【業界未経験者の採用を支援する助成金】
トライアル雇用助成金は、業界未経験者やキャリアチェンジを望む人々が新たな職場で一定期間働くことを支援し、その間の賃金の一部を補助します。これにより、企業は新しい分野への挑戦を促し、個人はキャリアの幅を広げることができます。
【転職や再就職を支援する助成金】
中途採用等支援助成金や労働移動支援助成金は、キャリアの転機にある人材が新たな環境で力を発揮できるよう、採用後の研修費用や職場適応支援など、企業側のサポートを強化します。
【非正規社員の正社員化を支援する助成金】
キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金は、パートやアルバイトなどの非正規雇用から正社員へのステップアップを奨励し、職員のスキルアップやキャリア形成を支援します。これは、従業員が安定した雇用につながるような環境を整えることで、職業生活の充実と企業の人材流動性の改善を図ることを目的としています。
【高齢者の雇用を支援する助成金】
65歳超雇用推進助成金は、高齢者の経験と知識を企業が活用しやすくするため、高齢者を雇用した企業に対して賃金の一部を補助します。これにより、年齢を重ねた人々も活躍し続けることができ、世代間の知識の伝承や多様な経験を職場にもたらすことができます。
これらの助成金制度を有効活用することで、企業は人材の多様性と安定した雇用を実現し、持続可能な成長を目指せるのです。助成金を通じて、企業と従業員双方のニーズに応える人材戦略を構築しましょう。これらの制度は社会全体の労働市場の健全化に寄与し、経済的な繁栄と社会的な福祉を促進する重要な役割を担います。各助成金の詳しい内容や、活用する場合の注意点などについては、次回以降のコラムで解説をさせていただきます。
プロフィール
一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二
1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。
Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会
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