中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

第39回

採用定着戦略サミット2024を終えて

一般社団法人パーソナル雇用普及協会  萩原 京二

 

2024年6月10日、私たち一般社団法人パーソナル雇用普及協会が主催した「賃上げが難しい中小企業のための採用定着戦略サミット2024」は、多くの参加者を迎え、大変成功裏に終えることができました。本コラムでは、サミットでの議論を振り返りつつ、私たちが感じた重要なポイントを共有したいと思います。

<中小企業の採用戦略>

今回のサミットでは、特に中小企業が直面する採用の課題について多くの意見交換が行われました。大企業に比べて賃金面での競争が難しい中小企業は、企業の魅力をどのように高め、求職者を引きつけるかが鍵となります。私たちの講演では、個人契約型の雇用制度(パーソナル雇用制度)のご説明と、実際の導入事例についてご紹介をさせていただきました。

企業の魅力を向上させるための具体的な手法として、まずは職場環境の改善が挙げられます。働きやすさを追求し、社員一人ひとりが自分の役割に誇りを持ち、やりがいを感じることができる職場づくりを進めることが重要です。さらに、福利厚生の充実や、スキルアップのための研修制度の整備も求職者に対する大きなアピールポイントとなります。

加えて、企業のビジョンやミッションを明確にし、それを社員と共有することで、一体感を醸成することも重要です。企業が目指す方向性や価値観を明確に伝えることで、求職者にとって魅力的な企業となり得るのです。私たちの講演では、このような企業文化の形成が、採用活動においていかに効果的であるかを具体的なデータを交えて解説しました。

<会社の魅力を向上させる>

サミットでは、企業の魅力を向上させることの重要性が強調されました。企業の魅力は、高い給与や豪華なオフィスだけではなく、企業文化や働き方、キャリアパスの明確さ、そして社員が感じる仕事の意義といった多岐にわたる要素から成り立っています。例えば、リモートワークの導入やフレックスタイム制度の活用は、柔軟な働き方を望む求職者にとって大きな魅力となることを改めて確認しました。

また、社員の意見やアイディアを積極的に取り入れる風通しの良い社風も、企業の魅力を高める重要な要素です。社員が自分の意見を自由に発言でき、それが会社の成長に寄与する環境を整えることで、求職者にとって魅力的な職場となります。

<働き方の多様化とその対応>

現代において、働き方や働くことに対する価値観が多様化していることも大きなテーマとして取り上げられました。多様な価値観に対応できる企業こそが、優秀な人材を確保できるのです。雇用形態も正社員だけに限らず、フリーランスやパートタイムといった多様な働き方を提供することが重要です。これにより、従業員が自分に合った働き方を選べるようになり、企業側も柔軟に対応できる体制が求められます。

特に、ライフステージに応じた働き方の提供は、女性や高齢者、子育て中の親など、多様なバックグラウンドを持つ求職者にとって非常に魅力的です。リモートワークや時短勤務、育児休業制度の充実など、働きやすい環境を整えることで、幅広い層の人材を引きつけることができます。

<選ばれる企業になるために>

私たちが感じた最大のポイントは、企業が生き残るためには「従業員から選ばれる企業」であることが不可欠であるということです。企業の魅力を高め、その魅力を効果的に発信することが、これからの採用戦略の鍵となります。例えば、SNSやウェブサイトを通じて、企業の価値観や働き方、実際に働いている社員の声を発信することが有効であることが、成功事例からも示されました。

また、企業が提供する働き方や職場環境について、透明性を持って情報を発信することも重要です。求職者が自分に合った職場を見つけるためには、企業の実情を正確に把握することが必要です。私たちの講演では、こうした情報発信の方法についても具体的なアドバイスを提供しました。

<労働契約を考える日としての意義>

さらに、6月10日は私たち一般社団法人パーソナル雇用普及協会が「労働契約を考える日」として記念日登録しています。この日は、6(ロー)10(ドー)の語呂合わせで「労働契約」を連想させるため、働き方や雇用契約について改めて考える日として制定しました。このサミットを通じて、労働契約の重要性や、企業と従業員の関係を見直す機会となったことも大きな成果です。

<サミットを通じて考えたこと>

サミットを通じて、私たちは中小企業が変化に対応できる柔軟性を持つことの重要性を再認識しました。労働市場の変化に迅速に対応し、従業員のニーズに合わせた働き方を提供する企業こそが、厳しい競争を勝ち抜いていけるのです。

企業文化の改善や、リーダーシップの発揮、そして従業員とのコミュニケーションを大切にすることが、企業の魅力を高めるための基本となります。さらに、これらの取り組みを効果的に発信することで、企業の魅力を広く知ってもらうことができます。

<まとめ>

「賃上げが難しい中小企業のための採用定着戦略サミット2024」は、非常に有意義なイベントでした。主催者として、参加者の皆様からのフィードバックをもとに、さらなる改善と発展を目指していきたいと考えています。これからの時代は、賃金だけではなく、企業の魅力を高めること、そしてその魅力を効果的に発信することが、中小企業の成功の鍵となるでしょう。従業員から選ばれる企業を目指し、持続可能な成長を実現するための取り組みを進めていく所存です。

以上がサミットを通じて私たちが考えたこととその報告です。今後もこのようなイベントを通じて得た知見を、企業の成長と人材確保に役立てていきたいと思います。


 

プロフィール

一般社団法人パーソナル雇用普及協会
代表理事 萩原 京二

1963年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒。株式会社東芝(1986年4月~1995年9月)、ソニー生命保険株式会社(1995年10月~1999年5月)への勤務を経て、1998年社労士として開業。顧問先を1件も持たず、職員を雇わずに、たった1人で年商1億円を稼ぐカリスマ社労士になる。そのノウハウを体系化して「社労士事務所の経営コンサルタント」へと転身。現在では、200事務所を擁する会員制度(コミュニティー)を運営し、会員事務所を介して約4000社の中小企業の経営支援を行っている。2023年7月、一般社団法人パーソナル雇用普及協会を設立し、代表理事に就任。「ニッポンの働き方を変える」を合言葉に、個人のライフスタイルに合わせて自由な働き方ができる「パーソナル雇用制度」の普及活動に取り組んでいる。


Webサイト:一般社団法人パーソナル雇用普及協会

中小企業の「シン人材確保戦略」を考える

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。