知恵の経営

第267回

値段やパッケージが変わらないままこっそり…“便乗値上げ”で信頼を失う

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
10月1日から、たばこ税増税などに伴い、たばこのメーカー・銘柄にもよるが、1箱当たり20~50円の値上がりとなった。筆者は喫煙者ではないため影響はないが、愛煙家にとってはますます厳しい状況が続くことになる。この種の値上げは、同日に酒税法改正により、第3のビール(原料に麦芽を使っていないもの、発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜたもの)が値上がりとなったアルコールも同様だ。これら商品は、税法との関係もあり、値上がり・値下がりしたことは一目瞭然となる。

その一方で、「シュリンクフレーション」「ステルス値上げ」といった言葉を最近耳にした読者の方もいるかと思う。その意味するところは、消費者が知らない間にこれまでの内容量や数量をこっそり減らして、値段据え置きで販売をし、実質、値上げをしているケースのことだ。値段やパッケージが変わらないまま、サイズだけが減っているので、一見すると何も変わっていないように見誤ってしまう。

原材料費の高騰や、人材不足・燃料費の高騰による物流コストの増加の影響により、それを値段に転嫁せざるを得ない状況は理解できる。また何とかして値段据え置きで、客に提供し続けたいという企業努力といえばそうとも言えるだろう。

ただ、消費者に理解・納得してもらえるか否かは、その値上げが原材料の調達先の見直しや製造方法の見直し、さらに包装資材の軽量化など、さまざまなコスト削減策を取った上での決断だったかどうかではないだろうか。

消費者には何の説明もなしに、中身は減っているのに商品のパッケージは以前と同じにして変化していないように見せかける実質値上げ。原材料費の高騰以前に作っていたにもかかわらず、それを理由にした値上げをする偽装値上げ。このようなことをされて、私たちも苦しいので値上げすることを理解してください、と言われて誰が納得するだろうか。

さまざまな内的・外的要因により苦労していることは、われわれ消費者も十分理解はしている。ただ、その値上げがわれわれに少しでも疑念を持たせるようなものであるならば、そのときに得られる利益よりも、後々に失う信頼の方が大きくなるということを認識すべきだと思う。


アタックス研究員・坂本洋介
2020年11月17日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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