知恵の経営

第173回

廃業防ぐための社長の役割

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
総務省・経済産業省による基幹統計調査、経済センサスによれば、近年の年間開業企業数は約18万社(含む個人企業)。一方、廃業企業数は24万社を数える。廃業企業数は、開業企業数を6万社も上回っており、過去15年間で見ると、何と100万社もの企業が減少している。

ちなみに、現在わが国には約380万社の企業があるので、今後もこうした規模とスピードで廃業が進むと、乱暴に言うと、63年後にはわが国の企業は消滅してしまうことになる。

こうした廃業が増加する要因は多々あるが、最大の要因は、社長の高齢化と後継者の不在だ。その意味では、後継者対策なくして、廃業を減少させる方法はないと言える。

しからば、どうすれば後継者を育て、結果として廃業を減少させることができるのだろうか。その最適な対策は、社長が自身の役割・仕事を理解・認識し、その役割を実行することに尽きる。もっとはっきりと言えば、近年の廃業企業の増加は、誰でもない、社長の怠慢がもたらした結果としての現象と言うことができる。

筆者が考える社長の仕事は、3つだけである。別の言い方をすれば、他の仕事は社長の仕事ではなく、他の社員の仕事と言っても過言ではない。

その社長の仕事とは、次の3つだ。

第1は、方向の明示と決断。 第2は、社員のモチベーションを上げる。

第3は、後継者を発掘し、育てる。

とりわけ重要な仕事は、社員や管理職の育成ではなく、第3の後継者の育成である。

新入社員の育成は先輩社員が担い、中堅社員の育成は管理職が担い、そして管理職の育成は、役員が担うべきだからだ。

社長も他の社員も1日は24時間、1年間は365日しかないにもかかわらず、この3つの仕事に多くの時間をかけずに、営業や販売、さらにはコストダウンや全社員の育成といった、社長が前面に出るべき仕事ではないことに多くの時間を割いている。この結果、時間が足りなくなって後継者を発掘できなかったり、育たなかったりするのは当然である。

余談だが、後継者の育成は早くて5年、平均では10年かかるのが一般的だ。より重要なことは、そのバトンタッチの時期となる。気力・能力・体力の衰えの見られるようになってからでは遅い。というのは、そうなってしまうと後継者への適格なアドバイスができないからだ。

多くの社長はそのことに気づき、社長の仕事に集中すべきである。

<執筆>
経営学者・元法政大学大学院教授 人を大切にする経営学会会長・坂本光司

2018年10月8日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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