知恵の経営

第207回

風物詩・代名詞からの脱却

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
世の中には、○○の風物詩、○○の代名詞と言われるものが数多く存在している。例えば、夏の風物詩のイメージが強い花火。7月後半から8月にかけ、全国各地で多くの花火大会が開催されていることもあり、そのイメージが、私たちに強く植え付けられていると思われる。

企業のブランド戦略を考えれば、このような○○の風物詩という商品・サービスを持つことは強みにはなる。しかし、その一方で、季節商品というイメージや利用者が限定されるなどといったリスクが、どうしても発生するのも事実だ。

企業経営において、ある一定の特定ファンを取り込むことは、安定収益の確保という点でいえば重要ではあるが、その一方で、その安定基盤がある中で、新たな需要を常に創造し続けることも、それと同じくらい重要になる。

近年、そのイメージを払拭させている代表例と言えるのが、サウナやかき氷といったものだろう。サウナは、おじさんの代名詞と言われるように、男性が高温に耐え、多くの汗を流す場として利用されている印象が強い。しかし、近年、多くの女性客がサウナを訪れているという。

そのきっかけは、スーパー銭湯などに、家族で出かけることも多くなり、これまでサウナを利用したことがなかった女性たちがサウナを利用する機会を持ったことが大きい。さらに、熱いだけのサウナのイメージを取り除き、岩盤浴やミストサウナなどを取り入れたり、アメニティーを充実させるなど、新たな需要を創造することに成功した。また女性たちは、これまでの利用方法とは異なる朝サウナ(朝ウナ)という需要も生み出した。朝サウナとは、文字通り、朝の時間帯にサウナを利用することで、大事な会議や商談がある日や低血圧で朝に弱いという女性が多く利用するという。

また、かき氷もまさに夏の風物詩といった食べ物であった。多くの方が夏のお祭りなどで食べた記憶があることだろう。そのかき氷も、今では冬でも販売をする店舗や1年通して販売をする専門店が数多く登場している。氷削機や氷が進化してることもあり、口どけが柔らかく溶けにくい氷ができ、夏にはない触感のかき氷が食べられること。単に涼を求めるだけではない見た目にもこだわったかき氷や、海外などで人気のかき氷が次々と日本上陸していることも大きな要因となっている。どうしても、天候に左右されることが多かった業界だったが、こちらも季節商品という枠から見事に脱却することに成功した。

○○の風物詩、○○の代名詞というものを持つことは必要であるが、それに頼り切ることなく、新たな需要・顧客を創造し続けることで、世の中が持つイメージ・固定概念を破壊することができるはずだ。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2019年8月6日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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