知恵の経営

第142回

働き方改革は経営者から

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
始業前1時間の早朝勉強会で、米国の経営学者ドラッカーの著書「経営者の条件」を題材に学んでいる。

ドラッカーは、「本書は成果を上げるために自らをマネジメントする方法について書いた。(中略)物事をなすべき者が成果を上げるにはいくつか簡単な事を行うだけでよい。成果を上げている者はみな、成果を上げる努力をして身につけている」と述べ、次の「8つの習慣」が重要だと指摘した。

(1)なすべきことを考える(2)組織のことを考える(3)アクションプランをつくる(4)意思決定を行う(5)コミュニケーションを行う(6)機会に焦点を合わせる(7)会議の生産性をあげる(8)「私は」ではなく「われわれは」を考える。

(1)、(2)はマネジメントに携わる者として組織として何をなすべきかを考える基本。(3)~(7)は組織として成果を上げるための基本。(8)は組織内の全員に責任感を持ってもらう基本である。

8つの習慣を身につけた人物が多く存在する会社は一流で、クレームなどの危機に直面したとき、全社一丸となって解決に当たるトヨタ自動車がその代表だと思う。

ところで、日本経済を再び成長路線に乗せるために政府が出している方針の一つが「働き方改革」だ。

目的は、生産性を向上させて残業時間を減らし、余った時間をゆとりのある生活や自らの成長のために使うことにある。

8つの習慣で挙げた一つ一つは、働き方改革を実践する上での気づきが多い。上に立つ者が、組織として何をすべきかが十分に検討されることなく、思いつき、惰性で仕事をしていることはないか。あるいは組織として成果を挙げるためになすべきことを手順を踏んでやっているか。働く人々全員に責任感を持ってもらうよう働きかけているか-。

人材難を嘆く経営者は多いが、社員の能力を最大限に引き出す努力をしているかと問われると自らの反省も踏まえて言えばまだまだだ。

働き方改革に真剣に取り組むには「隗(かい)より始めよ」の故事に倣い、経営者自らが8つの習慣を身につけ、自らの仕事を自問自答し、生産性を上げる努力をすべきだろう。

猛烈な働き方やリーダーシップで、売上高1兆円の企業を一代で築いた日本電産の永守重信会長の「働き方改革」「生産性2倍、残業ゼロ宣言」は8つの習慣に照らして考えると参考にすべき点が多い。

働き方改革を、労働基準監督署から目を付けられるからではなく、成果を挙げる経営をするために、自ら先頭に立って取り組む姿勢がいま、経営に求められているのではないか。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント 丸山弘昭
2017年12月18日フジサンケイビジネスアイ掲載

 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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