知恵の経営

第260回

調湿木炭で広がる快適空間

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
今回は、2007年第2回ニッポン新事業創出大賞アントレプレナー部門で優秀賞を受賞した、で、調湿木炭「炭八」の製造販売を行う出雲カーボン(島根県出雲市)の取り組みを紹介する。

社長の石飛裕司氏は、1991年出雲土建の社長に就任したとき、これからは公共工事が減り、土木と建築だけでは経営が厳しくなると、将来の建設業の先細りを見通した。そこで、島根県の家屋の解体に伴う良質な木材や、工場などから発生する木製パレットを再利用して、木炭としてリサイクルする事業を立ち上げると決めた。2001年、同社を設立し、日本最大級の炭化プラントを建設した。

炭八は、取り替えも不要で半永久的な効果を発揮し、その調湿や防音効果にかかる特許を2件取得するなど独自性がある。今や年間150万袋以上を生産し、出雲市内では、8世帯に1世帯が炭八によるリフォームを施工するなど人気も高い。近年では販路は県外が90%に拡大している。さらに、島根大学医学部との産学連携により開発した賃貸マンション「炭の家」の建築工事の設計・施工に力を入れており、この15年間に出雲市内で43棟708戸の引き渡し実績がある。

この使命を支える技術軸の一つ目は、産学連携により開発された日本で唯一の調湿木炭にある。産学連携で実験したところ、約1カ月で床下の湿度が低下し始め、床下の木材の表面も乾き始めた。3年後には、新築時と同レベルの木材の水分含有率、約18%にまで低下した。水分含有率が20%を超えるとシロアリが発生しやすくなるが、炭八はこれを防ぐことができる。

技術軸の二つ目は、素材へのこだわりである。有名な備長炭は、広葉樹を素材としているが、炭八は針葉樹を素材にしている。針葉樹は、地面から水を吸い上げる仮道管が広葉樹の道管より太いため、焼き上げて木炭となった後も隙間が多く、湿気を取り込む穴が広い。そのため、炭八は他の木炭よりも短時間で吸湿でき、空気が乾燥しているときには素早く放湿も可能となる。

技術軸の三つ目は、生産方式へのこだわりである。同社では、調湿力や吸着力を高めるため、日本国内最大規模の反復揺動炉焼成で約800度という高温で焼く。高温で炭化された木炭は、非常に小さな穴がたくさん空く。この穴の大きさと容積が除湿する力やニオイを取る力のもととなる。

同社は、木造住宅の床下・天井・室内での調湿木炭による除湿を通し、居住者への安全・安心・快適な生活の提供することで高い評価を得ている。石飛氏は「苦節14年でやっと芽が出てきた。今後、さらに市場全体が伸びることで、日本全体の室内環境が改善できる」と語った。


アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2020年9月22日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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