知恵の経営

第276回

透明性あるトップ選任とは

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
女性蔑視と受け取れる発言で東京五輪・オリンピック組織委員会の会長を辞任した森喜朗氏の後任に、五輪相だった橋本聖子氏が就任した。森氏は発言内容について、解釈の仕方、意図的な報道があったと話したが、擁護するのはさすがに難しかったと言わざるを得ない。

だが、より大きな問題はその後任選定である。当初は森氏が日本サッカー協会会長などを務めた川淵三郎氏を後継指名し、いったんは川淵氏も受託。その後、「手続きの透明性を世界が見ている」「選考は透明性を持って進めていただきたい」といった声が各方面から上がり、結局、川淵氏は会長に就任しなかった。

ここで問題なのは森氏が後継者を指名した点である。さらに、川淵氏は森氏を相談役に起用する意向を示していたというから、森氏の影響力は残り続けることになってしまう。日本では、昔から天皇が皇位を後継者に譲って上皇となり、政務を天皇に代わり直接行う「院政」が行われてきたが、今回も院政になる寸前だったといえよう。

また、その後の会長候補選定も、国際的批判に対処するために、後任は女性会長が望ましいという声もあってか、橋本氏に一本化された。しかし、その選定理由をみると、組織委員会の幹部が、女性であり、トップアスリートであること、IOC(国際オリンピック委員会)とも関係がいいことなどを挙げていたが、真っ先には女性ということだった。これでは、どんなに実績・貢献があったとしても、世間は女性だから選ばれたという目でしか見ないだろう。そういった意味でも、選考の透明性・納得性は極めて重要になる。

こういった疑問を感じる選定方法については、各都道府県や市町村の首長や議員を選ぶ選挙でも見受けられる。例えば、他の立候補者がいないとの理由で無投票での現職の再任や選挙において立候補の届け出者数が定数以下となった場合に投票が行われずに無投票当選になったりするケースだ。

このことは、公職選挙法で定められてはいるが、他に立候補者がいないから、定数以下の立候補者数だから、その人が当選ということで本当に良いのだろうか。現職の再任であれば、それまでの働き方を見ているため、まだ理解はできるが、新人候補が立候補して他に立候補者がいなく、無投票当選となる場合、本当にいいのだろうか。政治の空白を作ってはいけないということも十分理解はするが、この選考方法も違和感が残る。

今回は、政治がらみのトップの選考の例を示したが、こういったことは一般企業でも同様に見受けられることである。その時に透明性・納得性がある選考ができているか。それを考えるべきだろう。


アタックス研究員・坂本洋介
2021年2月24日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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