知恵の経営

第136回

全員が協力できる体制作る

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
日本人形の製造販売を手掛ける、ふらここ(東京都中央区)を再び取り上げる。以前、女性活用により需要の変化をつかんだことを紹介したが、具体的にどう女性活用・女性活躍の場を作り上げたかを説明したい。

同社の女性正社員は現在10人で、責任ある業務を任されている。一般的に女性の場合、人の上に立って手腕を発揮するより、横並びで一緒に仲良くなる傾向が強いように思われがちだ。原英洋社長も1人を突出させて孤立してしまい、結果が出ないことを何度か経験した。

それでもみんなが協力しあうことは良いことなので、一人一人にどれだけ責任を持って仕事をしてもらうかを考え、上下の差より、責任感を持たせるために人員配置を行った。

また、社内に後輩ができれば指導して育てたいという気持ちは、人として当然ある。その思いをうまく醸成していく中で、序列をつけるよりも、責任感を持って後輩を育てようと自然に思えるようにしていくのが良いと考え、取り組んでいった。

ただ、誰もが責任感を持てるものではない。そこを採用段階できちんと見極めないと人材育成は難しい。このため、ある程度資質のある女性を採用し、それなりの環境を用意して自然と責任感が高まるようにした。

もう一つ取り組んだのが、2015年1月から1年3カ月かけて全社員で構築した人事制度だ。全員参加としたのは原社長の苦い経験があったからだ。

14年に社内が“なあなあ”になることを危惧して、原社長1人で社員のための「ルールブック」を作成した。ルールを作るのは当たり前と思っていたが社員の前で発表したところ大きな反発にあった。その結果、当時6人しかいなかった社員のうち4人が辞める事態となった。

これを教訓に、原社長1人が全てを決めるのではなく、経営判断は別にして可能な限り社員の総意で決められることはみんなで決めるようにしていった。

そこで取り組んだのが人事制度の構築だ。未完成の部分はあるものの、全員参加によって、社員とのコミュニケーションが円滑に取れるようになり、女性特有の考え方を深く知る機会も得られた。

制度構築の中で、女性が働きやすい環境の整備や社員主体の制度・ルールの構築が進められている。代表的なのが子連れ出勤だ。特に幼稚園や学校が夏休みの時期など子供を家に残すと不安があるため、子連れ出勤を制度化して、安心して仕事に集中できる環境をつくっている。このほかにもできることから一歩一歩取り組んでいる。

女性活用だけに限らず、全社員で協力しあって仕事に取り組める環境を構築することは、全ての企業に共通して必要となる普遍的な考え方であろう。
 

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2017年10月23日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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