知恵の経営

第244回

「かかりつけ薬局」に徹する…地域密着型で地位築く企業

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
今回は、福岡県北九州市でドラッグストア・調剤薬局を経営するサンキュードラッグを紹介する。同社は、1956年に薬局としてスタートし、その後、北九州初の本格的ドラッグストアを開店するなど、順調に拡大していった。しかし、80年代に入ると、北九州を支えていた鉄鋼業が斜陽化し、人口減少と高齢化が急速に進み、衰退していく。そのような中、人口の多い福岡に出店するが、わずか3年で撤退を余儀なくされた。

この失敗がきっかけとなり、エリアを拡大せず、客を地元の高齢者層に絞り、彼らにとってなくてはならない「かかりつけ薬局」に徹することにした。真の地域密着型経営にシフトしたのだ。現在、北九州市と山口県下関市を中心に、ドラッグストア43店、調剤薬局30店、合計73店舗を展開し、売上高230億円超に成長している。

「地域のかかりつけ薬局」とはどのようなものか。1つ目の特徴は、超高密度出店である。店舗の出店基準は半径500メートルであり、1キロごとに1店舗が展開されている。それは、「北九州地区は高齢者が特に多く暮らす街」「高齢者が10分以内で毎日気軽に歩いてこられるお店にしたい」と考えたからだ。

2つ目は、高齢者が必要なものを必要な量だけ買える場所である。薬以外にも食品から日用品までそろう店づくりとした。つえやグラウンドゴルフのクラブまで、高齢者にうれしい商品を取りそろえている。

3つ目は、敷地内に内科、耳鼻科・小児科、産婦人科のクリニック、高齢者住宅を誘致して医療モール化を進めた。さらに調剤薬局を併設することで、ドラッグストアと相互に送客し合っている。

4つ目はデータ活用。「誰が」「何を」「何と一緒に」「何回購入したか」などが分かる購買記録を活用して、一人一人の嗜好(しこう)や購買履歴を分析し、客が潜在的に求めているものを推測し、「あなたにピッタリのものがここにある」という品ぞろえを進めてきた。

5つ目は、さまざまなメーカーに集まってもらい、客がまだ気づいていない商品の新たな価値とニーズを掘り起こす「潜在需要発掘研究会」を月に1度のペースで開催。客が気づいていない物をこちらが見つけ、的確にアドバイスすることで顧客満足度を高めている。

さらに6つ目は、調剤薬局全店で薬歴データを共有し、客の薬の飲み合わせから重複投薬のチェックまで行っている。複数店舗で行う高齢者の万全な健康サポート体制である。複数の医療施設にかかっても問題ない。超高密度出店だからこそできるのだ。

地元客に徹底的に寄り添い、潜在的に求めているニーズを掘り起こし、商品・サービスを提供し続けることで高い評価を得てきた。


アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明
2020年5月26日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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