知恵の経営

第234回

インバウンド依存の怖さ 新型肺炎による需要減でわかった求められること

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
いまだ新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。ある調査機関が、企業を対象に「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(回答:1万2348社)を実施したところ、「現時点で既に影響が出ている」が22.7%(2806社)、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」が43.7%(5401社)と、合わせて66.4%の企業が何らかの影響が出ていると回答している。

さらに、これを業種別にみると、「既に影響が出ている」では、卸売業が29.55%、運輸業が27.22%、そして製造業が26.67%と高くなっていた。また「今後影響が出る」では、製造業が51.78%、卸売業が47.34%、運輸業が43.44%、そして小売業が42.48%と、高くなっていた。

世界的なサプライチェーンを築く製造業や世界最適購買戦略の中で、世界各国から商品を輸入する卸売業などは、サプライチェーン再構築をするといっても、すぐに対応できるものではないため、しばらく影響は続くだろう。

それでは、全ての業種で対策が取れないかと言えば、そうとも言えない。観光地などに立地するサービス業は、今回の件を踏まえ、これまでのやり方を見直す必要があるように思う。

先日、仕事の関係で沖縄を訪問したが、常に人通りが多いイメージのある国際通りが閑散としていることに驚いた。観光スポットということもあり、これまで多くの国内観光客・中国からの観光客をはじめとするインバウンド需要を中心にしてにぎわってきたが、今回のことで、過度なインバウンド需要・一見客依存の危険性を再認識した。

というのも、毎回、国内観光客・インバウンド観光客がやってくることが当たり前となると、「ゆでガエル現象(カエルは、いきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと、逃げ出すタイミングを失い、最後には死んでしまう)」に陥り、顧客サービスや付加価値提供といった企業努力がおろそかになるからだ。

今回も、常に行列ができる観光地、飲食店や土産物店から、人通り・行列が消えたといった報道も見聞きするが、今回のことで、それが本当の企業の実力・評価ではなく、インバウンド観光客や一見客によって、つくられていたものだったことが証明される形となった。

観光地という特質上、ある程度は一見客の取り込みをしていくことは必要ではあるが、観光地にあるからという理由ではなく、その店舗・企業自体の魅力を高め、そこを目的に定期的に訪れるファンをつくることが、今後強く求められる。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2020年3月3日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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