知恵の経営

第153回

全社員の顔・名前を覚える

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の表賞式が16日、東京都千代田区の法政大学で開かれた。2011年に創設されたこの賞も、今年第8回を迎えた。

応募資格は過去5年以上にわたって、(1)人員整理を目的とした解雇や退職勧奨をしていないこと(2)外注企業・協力企業など、仕入れ先企業へのコストダウンを強制していないこと(3)障害者雇用率は法定雇用率以上であること(4)黒字経営(経常利益)であること(5)重大な労働災害がないこと-の5つ全てに該当していることとなっている。

今回、応募資格をクリアした申し込み企業は自薦・他薦を含めて108件。その中から第1次、第2次の審査を経て15の企業・団体が受賞した。

授賞式に参加できなかった読者のために、受賞企業の一部と特徴を紹介したい。

経済産業大臣賞を受賞した萩原工業は岡山県倉敷市に本社を構え、合成樹脂加工製品や機械製品の製造・販売を行っている。最も有名な製品がブルーシートで、国内市場規模が80億~100億円といわれる中でシェアは実に9割に達している。

受賞理由は次の5つである。

(1)創業から上場企業となった今日まで、業績ではなく社員の雇用と生活を第一に、どんな厳しい時代でも、社員をリストラしない経営姿勢を貫いている。

(2)正社員比率が86.9%と高い。特別な理由がない限り、全社員を生活が安定する正社員として雇用している。

(3)社長の部屋には、全社員のメモが入った顔写真があるばかりか、誕生日には全員に社長のメッセージカードを添えたバウムクーヘンをプレゼントする。

(4)「おもしれえ直ぐやってみゅう」という創業者精神が健在である。

(5)社員1人当たりの月間所定外労働時間は7時間程度。

社員1485人の大手でありながら、経営トップが社員一人一人の顔と名前を把握し、社員の誕生日などのイベントも大切にしているのだ。

このほか、厚生労働大臣賞を受賞した社員5083人のコネクシオ(東京新宿区)、そして審査委員会特別賞を受賞した中に、同1037人の前田工繊(福井県坂井市)があった。昨年までより大手の受賞が増えたことは、今回の一つの特徴だ。

社員の顔と名前を覚える人数には限界があると話す経営者もいるが、社員の多い大企業でもそれを可能にする術はある。

顔と名前が覚えられている人ほど、会社への満足度、仕事へのモチベーションは高くなる。今回の受賞企業が、それを如実に証明してくれている。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介

2018年3月19日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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