知恵の経営

第150回

目指せ「働きがいのある会社」

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
中堅企業の経営者からの相談で最近特に多いのは採用についてである。新人・中途ともに難しくなった。採用支援会社の提案で給与水準・勤務条件を見直して採用活動を行ってもうまくいかないのが実情だ。優秀な人材から大手に就職してしまい、中堅はなかなか来てくれない。少子化で経営者が採用・育成・定着という人材戦略を真剣に考えないと人材難で会社が存続できなくなる時代となった。

中堅企業の人材戦略は「働きがいのある会社」づくりにあると思う。長期的に考えて、外に対しては社会に貢献できる「お役立ち企業」であり、内には社員の成長と幸せを実現する「社員満足第一企業」だ。

ところで1991年に米国で設立された「Great Place to Work(グレート・プレイス・トゥ・ワーク、GPTW)」という組織がある。会社へのアンケート結果を公表し、「働きがいのある会社」の普及・実現を支援するのが目的だ。日本でも2005年から「GPTW Institute Japan」が活動を始めている。GPTWが定義する「働きがいのある会社」は経営者にも大変参考になる。

働きがいのある会社の構成要素は3つ。1つ目は仕事との関係性で、キーワードは「誇り」。会社のことを胸を張って「自分たちの仕事は世の中に役立っている」と思えて、顧客から「ありがとう」と喜んでお金を払ってもらえるのが理想だ。

2つ目は一緒に働く仲間との関係性で、キーワードは「連帯感」。仕事は遊びではないので厳しい状況に追い込まれることも当然ある。こんな時、仲間と協力して仕事ができる連帯感の持てる職場であれば苦しさも我慢できるはずだ。仲間同士が切磋琢磨(せっさたくま)して向上する職場は、働きがいのあると言ってよい。

3つ目はマネジメント層との関係性で、キーワードは「信頼」。社員が会社や経営陣を信頼できる会社は働きがいがある。「信頼」は「信用」「尊敬」「公正」という要素に分解できる。筆者の体験では従業員が社長を信頼して自慢する会社は間違いなく働きがいがある。

GPTWによる「働きがいのある会社」とは「従業員が自社の事業と自分の仕事に誇りを持ち、共に働く仲間と連帯感が持て、経営者、管理者を信頼している会社」となる。

安倍晋三首相は、今国会の所信表明演説で「働き方改革」を打ち出し、経営者は改革に取り組むことが重要課題となっている。長期的視点に立つと「働きがいのある会社」になることこそが、企業存続の基本条件であると思う。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2018年2月26日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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