知恵の経営

第283回

第12回「いちばん大切にしたい会社」大賞の募集が7月からスタート

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
本コーナーで何回も紹介させていただいた、筆者が審査委員長を務める「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞は、2010年度に、産官学関係者により創設されスタートした。以後、毎年、少ない年で10社、多い年は30社近い企業を表彰している。

現在も、当時も企業を顕彰する制度は、国を始め、地方自治体や大学、さらには民間団体が主催で、数えきれないほど多くがある。そうした中、あえて創設した。

というのは、既に存在している大半の賞が、木を見て森を見ずではないが、いちばん大切にすべき経営学に関する評価が、決定的に欠落してしまっている表彰制度が大半だったからだ。

当初、一部のいわゆる専門家諸氏からは、6つの応募基準と、50の第1次審査基準、そして20の第2次審査基準などを見て、「これに該当するような企業があるとは、到底思えない、表彰制度として成立しない」などと揶揄(やゆ)されたこともあった。

しかしながら、この賞は年々拡大し、20年度は過去最大の28社が表彰されるまでになった。

ちなみに「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「応募基準」は、(1)過去5年以上、人員整理などはしていない(2)過去5年以上、重大な労働災害を発生させていない(3)過去5年以上、取引先に一方的なコストダウンなど理不尽と思われるような取引はしていない(4)過去5年以上、障害者の実雇用率は法定雇用率以上である(該当規模以下の企業は、障害者施設などからの、仕入れや発注を安定的かつ、継続的に実施している)(5)過去5年以上、黒字経営であり、納税責任を果たしている(6)過去5年以上コンプライアンス違反はない-の6つ。

これに該当しない企業は応募すらできない。その後「第1次審査基準」そして現地調査を中心とした「第2次審査基準」がある。恐らく数ある企業の表彰制度の中で、最もハードルの高い賞と思う。

さらに言うと、第1次評点や第2次評点がたとえ高くても、重要な項目において、1つでも劣悪な項目があれば表彰しない。

そのいくつかを例示すると、(1)転職的離職率が異常に高い企業(10%以上)(2)社員一人当たりの年間所定外労働時間が異常に長い企業(年間240時間以上)(3)平均有給休暇取得率が異常に低い企業(30%以下)(4)業界平均と比較し正規社員(無期雇用社員)比率が異常に低い企業(5)財務の安全性が著しく劣る企業(自己資本比率10%以下)(6)社員の年間給与が業界平均と比較し著しく低い企業(7)社員の年間給与と比較し役員の報酬が異常に高い企業(8)サービス残業を日常的に課している企業(9)就業環境や福利厚生施設が著しく劣悪な企業(10)障害のある社員の大半が非正規(有期雇用)社員の企業-など。

21年度「第12回大賞」の募集が7月からスタートする。6つの応募基準に該当すると思われる「真にいい会社」があったら、自薦・他薦してほしい。応募できる会社が多数派になれば、必ずや日本は再生する。


経営学者・元法政大学大学院教授 人を大切にする経営学会会長・坂本光司
2021年5月12日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


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