知恵の経営

第217回

経営者は経営理念の伝道師

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
筆者はアタックスグループの創業メンバーであり、社員研修の場で当グループの創業の志・理念をベースとしてミッション・ビジョン・行動原則からなる「アタックスウェイ」を毎年話す。変化の激しい時代ではあるが創業の志・理念と現在当グループが掲げているミッション・ビジョンは、その本質、意味するところは同じである。

長期に繁栄する企業には、社員が納得・共感する経営理念が必ず存在する。経営理念とは、会社の存在価値であり、会社を船に例えれば航海の目標となる星である。星に導かれた船は遭難することがないように、経営理念をベースとしたビジョン・戦略を策定し実行する会社は永続する。経営理念に社員が共鳴し、具体的な行動指針を策定し、社員一人一人が意識し実践する会社は優れた会社である。

経営理念をベースにすれば経営者自身が経営のよりどころを持つことができ、精神的にも楽になりブレのない正しい経営判断をすることができる。経営理念は会社が顧客、社員、地域社会、取引先、株主といった利害関係者(ステークホルダー)のために何を実現しようとするかを社内外に表明するものである。顧客には「どんな顧客に、どんな価値を提供できるのか」を表明しなければならない。社員には「自社の仕事に関する誇りとどのような考え方で仕事をすると幸福になれるのか」を表明しなければならない。表現を変えると社員に「生きがい」と「働きがい」を伝えるものでなければならない。

次は地域社会と取引先である。環境問題に無頓着な会社・コンプライアンス(法令順守)違反を繰り返す会社、特に最近は「働き方改革」の時代となり労働基準法を無視するブラック企業は消費者や就職を希望する学生から見放されてしまう。また取引先は共存共栄のパートナーであり、協力なくして事業の遂行はできない。

最近は地球環境問題がクローズアップされている。2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)を経団連は支援しており大企業が活動を開始している。中堅中小企業にあっても自社のできる範囲での活動が求められる時代となっている。

ステークホルダーの最後が株主である。オーナー会社の多くは株主をステークホルダーとして意識していないがオーナー一族以外の株主がいるケースでは株主の支持が必要となる。

正しい経営理念を作り、浸透・実践する効用を要約する。絶えず問題が発生する経営の現場でぶれない判断基準があれば問題解決の決断に迷うことも少なくなる。また経営理念で社員に守るべき行動指針を示す効用は大きく、行動指針の徹底は「良き社風づくり」にもなる。

<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2019年10月29日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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