知恵の経営

第113回

大手チェーンも敵わない 函館市内最多を誇るハンバーガー店の経営戦略

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
今回は、ハンバーガーショップチェーンを展開する有限会社ラッキーピエログループ(北海道函館市)を取り上げる。地域1番店主義を取り、地元密着を徹底して函館市内を中心に17店舗を出店している。同市内のハンバーガーチェーン店舗数は同社が最多。日本マクドナルドはじめ、大手チェーンは少数派となっている。

今年1月に王一郎社長に取材した。積雪が多く歩きにくいなか、取材前に訪れた函館駅前店は昼食時間であったにせよ、店内は満席だった。

なぜ、ここまで消費者に支持される店になったか。ここでは理由を3つ挙げる。

1つ目は17店すべてが異なったコンセプトを打ち出していること。王社長は「当社はファストフードではなくテーマレストラン。心を込めて作った料理を楽しい雰囲気の中で味わっていただく。各店それぞれ違ったテーマを持つ。気分に合わせて店を使い分けてもらいたい」と話してくれた。

メニューもハンバーガーだけではなく、カレー、オムライス、とんかつ、ピザ、焼きそば、店舗ごとのオリジナルメニューなど顧客の要望に合わせ次々と増えていった。

さらに「MYバーガー・アイデアコンテスト」というイベントがあり、顧客が食べたいハンバーガーを応募し、コンテストで上位になると、店舗メニューとして実際に販売される。これにより、顧客は自分たちの店という感覚をより強くする。

2つ目は、地域密着の店舗展開。王氏は神戸生まれだが、26歳のとき訪れた函館の、生まれ故郷に似た雰囲気を気に入り移り住んだ。以来、函館でオンリーワンになること、函館に根差した店舗展開を進めた。

「札幌などの大都市に無理に進出せず、事業の適正規模を守ることで、味やサービスの質が維持できる。遠隔地に食材を冷凍輸送すると、どうしても味や品質などが落ちる」。だからこそ地域密着にこだわった。

3つ目は作りおきをしないこと。レジで注文を受けてから作り始めるオーダーメードシステムだから、ミートパティはいつも出来たて、野菜もシャキッとしたまま提供される。そのためハンバーガーは、注文してから出てくるまで平均10分程度はかかる。

通常のファストフードであれば早さが重視されるはずだが、同社は違う。顧客も出来たてのハンバーガーの味を知っているから、どんなに待たされても文句を言わず、リピーターとなる。その証拠に同社の会員である「サーカス団」に入団する団員は年々増えている。

ほかにも、まだまだ多くの理由があるが、それは読者自身の目と口で実際に店舗を訪れ、体感してもらいたい。


<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司

2017年4月27日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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