知恵の経営

第284回

新型コロナをどう乗り越えるか、長寿企業に関する研究で考える

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルが自社の長期的繁栄を図るため、1980年代に長寿企業に関する研究を行っている。この研究によると危機を乗り越え繁栄を続ける長寿企業には4つの共通要因があった。

1つ目は「環境変化に敏感である」。環境変化は突然現れるわけではないのだが、今回の新型コロナウイルスショックは、環境変化に対応するため事業構造の抜本的見直し、転換を余儀なくされている。この意味では経営トップが指揮官先頭でぬるま湯から飛び出す絶好のチャンスとなっている。

2つ目は「事業の独自性と従業員の結束力がある」。事業の独自性は理想的には自社の強みを磨き他社では提供できないオンリーワン・ナンバーワンの製品・サービスを提供する事業を営んでいる企業である。日本には中堅企業でいわゆる「選択と集中」で事業の独自性を持っている企業は結構多い。これらの企業の繁栄は経営トップのリーダーシップによる所が大きいが、社員一人一人が自社の事業の独自性に自信と誇りを持ち、社員同士が困ったときは助け合う社風がある。またミドルマネジメント層が次世代により良い会社を残したいという熱量が高く、結果として結束力も高い。

3つ目は「分散的に経営され自由度がある」。日本の中堅中小企業が抱えている重要な経営課題の一つは事業承継問題である。これらの会社のトップにリーダーシップがあり、立派な業績を残している会社も多い。しかしトップが優秀で全権を集中しているが故に社員が指示侍ち人間になっているケースも多い。経営はゴールのない駅伝レースであり、次に経営をバトンタッチする人材を育てておく必要がある。「分散的に経営され自由度がある」会社は経営を担当する人材が育つ仕組みを具備している。

4つ目が「財務は保守的である」。絶えず自らの本業は何かを考え、本業には金を使うが本業以外には徹底して金を惜しむということである。トヨタ自動車の中興の祖といわれた石田退三氏は「自分の城は自分で守れ」が経営哲学であった。ケチケチ精神で金をため、工場と設備に投資を行った。この精神は現在の豊田章男社長にまで連々と受け継がれている。

今回のコロナショックでもビクともしない中堅中小企業は財務が保守的で潤沢な資金を保有している企業である。「治にいて乱を忘れず」と言っていた、松下幸之助翁が残した「ダム経営」を日頃から心掛けなければならない。

今こそ会社は自己変革が問われておりウィズコロナの新常態に合わせて生き残らなければならないし、戦後最大の環境変化を乗り越えることによって会社は一層強くなれるはずだ。


アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2021年5月26日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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