知恵の経営

第257回

コロナ禍、変わりゆく「おもてなし」を今一度考える

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
新型コロナウイルス感染拡大の収束が見えない中で始まったことで、賛否はあるものの、7月22日に政府が推奨する「Go To トラベル」キャンペーンが始まり、県またぎの移動が促進されるようになった。ただ、やはり多くの方が、今回はお盆の帰省や夏季休暇中の旅行に不安を感じ、控えるという考えが多いように思う。

そんな中で、熊本県観光協会連絡会議が「新型コロナウイルス感染症収束後の旅行・観光に関する意識調査」を行い、その結果を公表した。この調査は、熊本1カ所での調査ではあるものの、その結果内容は、今後の旅行・接客サービスのあり方の参考になると思う。

旅館のおもてなし対応で、コロナ禍において、なくても良いと思うものを聞いたところ、「スタッフ一同でのお迎え&お見送り」が70%と最も多く、「仲居さんからの部屋でのお茶&おしぼり出しなど」が67%、「客室までの荷物運び」が64%と続いた。

旅館における楽しみの一つは、おかみさんや仲居さんらによる「おもてなし」であることは間違いないだろうが、あえて、おもてなしをしないことがおもてなしという考えもあるように思う。

旅館の事例ではないが、茨城県に坂東太郎という和風ファミリーレストランチェーンがある。同社は2010年に家族レストラン坂東太郎を開店した。店舗の特徴は効率度外視の全室個室。家族レストラン構想を進める中で、これまでの流れとは一線を画した家族のためのレストランのサービスとは何かを考えた。

議論する中で、まず旅館を思い出すと、夫婦や家族で旅館を訪れた際、当然、仲居さんが案内をしてくれる。仲居さんは室内について細かく説明をしてくれるが、「仲居さん早く出て行ってくれないかな」というのが本音ではないだろうか。

サービスとは何かを考えると、全てをやってあげることがいいサービスだとはかぎらない。どうやって家族の空間をつくってあげるかということが、本当のサービスかもしれない。こういったことをしっかり議論した。

その結果、家族同士の会話、ふれあいを増やすために、お茶のセットを個室ごとに設置しセルフサービスに、また注文はタッチパネルを導入するなど、なるべく店員が介在しない家族の空間づくりを大切にした。

前例がない中で始めた家族レストラン。本当にこれでよいのかと自問自答の連続であったが、数多くの客が利用をし、訪れる客の多くが家族連れや親子三代での来店と、家族連れの客たちの心を確実に捉えた。これまでのサービスが過剰サービスとは言わないが、もう一度、本当のおもてなしについて考えてみる機会ではないだろうか。


アタックス研究員・坂本洋介
2020年9月1日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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