知恵の経営

第87回

人が集う「ごちゃまぜ」の街

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
 金沢市郊外に「シェア金沢」という地域がある。一言で言えばさまざまな人々が一緒に暮らす、いわば「ごちゃまぜ」の街である。高齢者や障害者、大学生ら多様な人々がいる。

 その事業主体は「社会福祉法人佛子圓」。ルーツは宗教法人行善寺だ。初代理事長の行善寺元住職は、貧困で寺に預けられ、幼少期に育てられるとともに悲惨な戦争体験もした。

 そうした事情もあり自身が住職だった寺で、既に1960(昭和35)年頃から戦争孤児や身寄りのない障害児を引き取って世話をするという、まさに駆け込み寺の使命を果たす立派な住職だった。

 祖父である初代理事長の背中を見ながら育ったのが、雄谷良成理事長だ。社会福祉事業をより充実していくために佛子圓を設立して各地で事業を展開し、総数は70カ所を超す。

 シェア金沢はその一つで、緑豊かな1万1000平方メートルの広大な敷地の中にある。結核病棟などのあった病院跡地で荒れ果てていたが、二十数億円を投資して3年前に完成した。

 テーマは「ごちゃまぜ」で、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)32戸、アトリエ付き学生向け住宅2戸、学生向け住宅6戸、児童入所施設(30人)などがあるが、全て満杯で総入居者は約80人に達する。

 このほか放課後の学童保育や障害者の就労移行支援事業、さまざまな文化事業、レストラン事業や近隣農家の農産品直売も行うため、他地域からの入込客も1日100人以上に及ぶ。老若男女、障害者・健常者、地域住民・よそ者らを問わず、すてきな空気が漂うまさに「ごちゃまぜ」の空間である。

 サ高住の入居者は半分が県内、半分は県外。県外の半分は東京圏で、男性の単独高齢者が多い。アトリエ付き学生向け住宅には金沢美術大学の学生が、一般の学生向け住宅には金沢大学の学生が住んでいる。
 月の家賃はサ高住が15万円、学生は1DKで2万5000円。ただし学生にはシェア金沢で月30時間のボランティア義務がある。高齢者の大半も、敷地内の小売店でニコニコしながら販売に携わるなど、ボランティアをしていた。ここは、未来の私たちの理想郷である。
<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司
2016年9月28日フジサンケイビジネスアイ掲載


 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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