知恵の経営

第228回

「おひとりさま市場」から見た新たな需要の開拓

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
ここ最近よく聞く言葉として「おひとりさま市場」というものがある。ちなみに、おひとりさまとは、単身世帯の増加やライフスタイルの変化や趣味・嗜好(しこう)の多様化などにより、一人で行動・消費することを好む人たちのことを指す。そして、おひとりさま市場とは、その方たちをターゲットにした新たな市場である。

ある調査会社が2018年に発表した「おひとりさま関連16市場の動向調査」によると、外食、国内旅行、カラオケ、遊園地・テーマパークなど、おひとりさまに関連する16の市場を抽出した市場規模調査において、実に14の市場で成長の見込みがあるという結果が出ていることからも、新たな市場・需要となることは間違いないだろう。

それゆえ、多くの企業が、今このおひとりさまの新たな需要を開拓しようと、新たな戦略を次々に打ち出している。例えば、ファミリーレストランでは近年「おひとりさま席」を設ける店も出ている。ファミレスといえば、メインターゲットは家族を中心とした数人のグループ客だ。ただ単身世帯の増加や食の孤食化が進む背景。またはお店を利用する客層の変化もあり、その導入を始める店舗も現れた。

ある大手チェーン店では「家族で食事をするだけの場所ではなく、友人とティータイムを楽しんだり、仕事や勉強をしに訪れたり、お酒を飲まれたり、さまざま」「単においしい料理を出すではなく、食にまつわるこの空間をいかに気持ちよく過ごしていただくかがコンセプト。いろんなニーズのお客さまに満足していただける空間を作ることに尽力している。一つのニーズにとらわれず、お客の使い方にできるだけ応えていきたいと考えている」と話す。

ただ、企業側もやみくもに、おひとりさま市場を狙いに行っているわけでは決してない。先述したファミレスでは、来店客の動向を常にチェックしたり、各店舗の店長や担当者からのヒアリング、また利用者から投稿されるSNS(会員制交流サイト)などへのメッセージを確認し、仕事や勉強をしに来る客が多い店舗などに限定して導入をしているため、導入前と比較して、効率良く席への案内ができるようになったと話す。

さらに、おひとりさま席を導入したことで、来店客も周りを気にすることなく、作業や勉強に集中できるということで利用しやすくなった。店もそのために電源やWi-Fiが確保できる場所にそういった席を用意するといった工夫もして、新たな需要の開拓に取り組んでいた。

今回は、ファミレスを例にとってみたが、市場環境が変化する中で、いかにその環境に適応し、新たな需要・市場を開拓していけるかが、今後の企業の成否を分ける鍵の一つになる。

<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2020年1月21日フジサンケイビジネスアイ掲載

 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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