知恵の経営

第270回

テレワークでみえた課題 管理職と一般社員の関係に微妙な変化

アタックスグループ(税理士法人、経営コンサルティング)  執筆

 
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、テレワーク・在宅勤務の機会が多くなった。現在では、少しずつ通常出社に戻る企業・社員も出始めているが、全国的な感染者数再拡大もあって、今後も完全回復は難しいだろう。

そんな中、テレワークの影響で、管理職と一般社員の関係にも微妙な変化が生じている。まず、管理職側からいえば、毎日、会社で顔を合わせていることでかろうじて成り立っていると信じていたコミュニケーションが図れなくなった。その結果、一般社員に対して自主的に仕事を進めてもらうために、言葉で明確に仕事の説明をすることや、随時、進捗(しんちょく)管理確認をすることが、これまで以上に求められるようになった。

それまでは、何かあれば声を掛け、社員から質問があれば、それに対応していれば形上は何とかなっていた。しかし、画面越しやメール・電話による非対面・非接触のコミュニケーションでは、一度に伝えきる、理解させることが重要になり、これまで気付かれなかった指示を出せない・説明能力がない・マネジメントできない管理職の存在が浮き彫りになった。

一方、今まで上司からの指示を待って動くことを当たり前にしていた、いわゆる「指示待ちタイプ」の一般社員も大きな課題を抱えるようになった。それまでは、言われたことを言われた通りやることが自身の仕事だと思い込み、それを忠実にこなしてきた。

しかし、テレワークにおいては、自発的にコミュニケーションを取らなければ、管理職が自分の仕事の進捗具合を常に見てくれているわけでもなく、業務中に疑問を感じたとしても、すぐにアドバイスはくれることはない。また、これまで自分で考えることをしてこなかったために、指示された業務を終えてしまうと、次に何をやってよいか分からない。上司が次の仕事の指示をくれない、と思考停止状態に陥ってしまうのだ。

テレワークの話になると、まず環境整備が必要といった議論になりがちであるが、既に多くの企業でテレワーク対応の環境は整ってきているように思う。にもかかわらず、通常出社に戻るケースが増えていることを見れば、それが原因でないことは明らかだ。これを機会に、指示が出せない管理職・指示を待つだけの一般社員という構造を改革することを真剣に考えるべきだと思われる。


アタックス研究員・坂本洋介
2020年12月8日フジサンケイビジネスアイ掲載
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。


Webサイト:アタックスグループ

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